日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎「大丈夫」は魔法の言葉

◎「大丈夫」は魔法の言葉
 ベッドに横になった途端、ぽっちゃり系の看護師が寄りつきました。
 「ちょっと聞いて下さいよ。皆酷いんです。わたしがデブだからバカにしてる」
 「そんなことないだろ。まだ大丈夫」
 この続きは「80キロ超えてなけりゃ死にはしない」ですが、さすがにそれは飲み込みます。
 「皆に『今回の大雨みたいなのが来たら、私のことをおんぶしてくれるか?』って訊いたら、全員、『絶対に無理』って言うんですよ」
 面倒臭いな。話題をずらそう。
 「ぽっちゃり系とデブは違うだろ。愛嬌があるうちはぽっちゃりだから、全然大丈夫。タレントで言えば、ヤナギハラ何とかはぽっちゃりで、ワタナベ何とかはデブ。健康に問題が出そう」
 と言いながら、「まだ大丈夫」の「まだ」に気付かれるんじゃないかと、ヒヤッとします。「デブ」って認めていますね。
 ここで看護師がすかさず訊いて来た。
 「Kさんなら、おんぶしてくれますよね?」
 少し別のことに気が行っていたので、うっかり正直に答えてしまう。
 「俺はぎっくり腰があるからなあ」
 すると看護師が間髪入れず、「やっぱり。おんぶしてくれないんだあ。デブだから」。
 ああ面倒臭い。
 「大丈夫だよ。気にすんな。俺は患者だから、無理が効かないって意味だよ」

 ここで話題そらし。
 「そう言えば、昔、夜のクラブ活動に励んでいた頃、ふとホステスに『最近、髪の毛が薄くなった』と零したんだよ。そうしたら、そのホステスが言うには、『大丈夫、大丈夫。頭の毛なんて3本あればいいんだよ』と明るく慰めた。おいおい。俺は波平じゃあねえって。ま、この場合は、頭の話題だけに『ハゲましてくれた』と言うんだけどね」
 すると、周りのオヤジ看護師が「プッ」と吹いた。
 「夜のクラブ活動」がおかしかったらしい。
 ちなみに、「毛が3本」は波平ではなくオバQのほう。

 「頭の毛なんか三本あればいいってのは、オヤジを小バカにした話だが、ものは言いようで、最初の『大丈夫』をうまく言えば、全然気にならない。『大丈夫』は魔法の言葉なんだな、これが」
 すると、看護師は「ホステス」の言葉のほうに反応しました。
 「じゃあ、こんな私でも銀座でお勤めできますか?」
 「そりゃ無理」
 「やっぱりデブだから?」
 「いや、身長制限があるもの。160センチ前後は必要。でも新宿なら大丈夫。新宿で必要なのは愛嬌で、愛嬌と胸の谷間があればホステスになれる」
 「そっかあ。でも新宿よりは銀座がいいなあ」
 
 「大丈夫」の連発でようやく脱出。
 このホステス、じゃなく看護師は「かまってちゃん」のようで、いちいち丁寧に対応しないと機嫌が悪くなる。
 看護師あしらいをちゃんとしておかないと、点滴に界面活性剤を入れられてしまう可能性があるので(笑えない)、上手くすりぬける必要があります。 
 病院は人と人との間隔が近く、直接手が触れる間合いなので、気をつけなくてはなりません。
 人間嫌いの当方にとっては煩わしいのですが、致し方ありません。