日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎房総から来ました

◎房総から来ました
 病棟の看護師の一人が「房総出身」とのこと。
 24、25歳のように見えますので、まだ新米の域ですが、技量は確かで、看護師には向いています。
 ちなみに、看護師の場合、腕や脚を触られた時の手の圧力で、力量がすぐに分かってしまいます。
 話し方もゆっくり目で、患者が安心しやすいので、看護師に向いている女性です。

 「房総出身」という自己紹介だけ聞き、その後はほとんど話をしたことがなかったのです。
 この辺、若い人には私は冷淡です。
 意図的にそうしており、大人が若者の重石になるべきだと思うからですね。
 物分りの良い教員や上司が増えたので、若者が他人を舐め、そのまま大人になるので、おかしくなってしまいます。
 適度な重石を載せるから漬物がほどよく漬かり長持ちするのであって、それをしないでいたら、白菜は数日で腐ってしまいます。今は腐った若者やそれが年を食った大人が本当に多いです。

 とまあ、小言は別の機会にすることととして、この看護師について私は「山の育ち」だろうと思っていました。その辺、自分が「山家育ち」なので何となく分かります。
 振る舞いが慎重だし、他人との間に少し間を置いています。
 「絶対に房総の真ん中らへんで、山の中で育ったよな」
 こう睨んでいたのです。

 昨日、たまたまこの看護師が担当になり、近くで見たのですが、名札に「磯野」と書かれていました。
 「磯」では、たぶん山では無いですね。
 思わず訊ねてしまいました。

 「本当は海辺の左立ちだったの?俺はまた山の育ちだと思っていたが」
 ここ「本当は」ってのはおかしな表現ですね。自分の頭の中だけの話です。
 でも、すぐに考えを改めます。
 「あ。結婚してこの苗字になったのか」

 すると看護師が答えました。
 「いえ、私はまだ結婚していません。元々、この苗字ですけど、山の方の育ちですね」
 ああ良かった。一応外れてはいませんでした。
 何千人も面接調査をした経験があるせいで、その人がどういう人かを推測して、あまり外れることがありません。
 どこでどう育ったとか、どういう趣味があるとか、妻や夫の外に愛人がいるとか(笑)。

 「やはり牧場があったりする方だったか。ああ良かった」
 何が良かったんだか、相手には分かりません。
 すると看護師が「何故そう思ったんですか?」。
 ひとつの見方は「手の甲」ですね。
 女性なので日焼け対策をしていると思いますが、しかし、海辺にいれば、必ず手首の近くの手の甲が日焼けしています。十数年も離れれば消えてしまいますが、二十台ならまだ残っています。
 皮膚の継ぎ目が無く、腕も手も白いので、まずは「山の方」と考えたわけです。
 山家でも日差しがありますが、農作業などで外に出る時には黒い手袋をします。

 外にもいくつか要素がありますが、ネタばらしは不要だろうと思います。
 ま、定説通りで、初対面の場合、「女性なら手を見て、男性なら靴を見よ」と言いますね。
 もちろん、年齢や境遇で、見方が違います。

 とりあえず、山家育ちの看護師のことは、これからえこひいきをすることにしました。
 周囲に人が少ない環境で育つと、人あしらいに苦慮すると思います。ものおじもするので、学校や職場では二歩も三歩も下がっていたのでは。
 なら自分の娘と同じように見てやろうと思いますね。
 他の若手は完全無視ですが、山の子は別です。

 世の中は不公平に出来ているので、これくらいは当たり前です。
 もちろん、「仕事が出来る」ということが前提にあります。
 「同郷です」とか「同じ大学です」と肩を叩く人は沢山いますが、そういう近づき方がそもそも嫌いなのです。