◎やさぐれ者の目にも涙(426)
斉藤商店では、いつも代金の2倍くらいは貰ってしまうので、お返しにお菓子を届けることにした。
月曜だが、やはり葡萄の出荷時期だから店は開いていた。
元々、ここは農園の作業場だったのだが、前で直売するようになった。ところが、葡萄は1年のうち一時期だけだから、その場所を有効利用するために、お饅頭や漬け物を売ったりするようになったのだ。
今は、小母さんも高齢になり、しんどくなったので、お饅頭作りを止めた。今年はそういう事情だった。...
当方はてっきり、元がよろづ屋みたいな店だと思い、勝手に親近感を抱いていたわけだ。これも勝手な思い込み。
裏には広い農園があり、豆類を扱う同名の会社があるから、お子さんたちがそれを経営しているということ。
小母さんにお菓子を渡すと、子どものように喜んでくれた。
「あれこれ気を揉まずに済むように」と住所を訊くと、家までの行き方を地図に描いて教えてくれた。
「家からは花火大会を見るのにちょうどいいから」
小母さんの頭の中では、当家が「遊びに行く」のが前提になっていて、「道に迷わないように」と教えてくれようとしていたのだ。
「細々気を回すところが、お袋にそっくりだ」
見た目はまったく似ていないが、振る舞い方がよく似ている。
「ここは入り難いから、先に行って回ってくるのが楽だよ」
話を聞いているうちに、しわじわと泣けて来る。
こういう時は、弱視でいつもサングラスをしていることが役に立つ。
店を出て、凹みながら運転し、神社に参拝した。
画像にさしたる異変は起きず、ごく普通の状態だ。
「そう言えば、夜中に起こされることも今はほとんど無くなっている」
ま、十月からが本番だから、少しの間、お休みが貰えるのか。
この時期を利用して、人事を尽くす必要がありそう。
自分のことに集中出来る時間はほとんど無かったから、しばらくはこのままでいて欲しいと思う。