◎『鬼灯の城』11 「鬼灯」の章 前段
『鬼灯の城』はいよいよクライマックスに差し掛かった。
盛岡タイムス紙面では今はちょうどこの辺になる。
夏が来て、鬼灯の花が咲くようになる。
桔梗は重清の子を孕むが、次第に体調が悪化する。
それもその筈で、杜鵑女が侍女のおように前妻雪路の霊を降ろし、その雪路が桔梗に取り憑くようになっている。
一方、福田館の密偵が釜沢を訪れ、小保内三太郎の口から、「福田の家来を倒した」ことを突き止める。
福田との間で合戦が起きること必至の状況になって来たが、重清はまだそのことを知らない。
この先の展開を少しだけ記すと、杜鵑女は薬種の入手のため、薬種商人の許を訪れるが、そこで生き別れになった姉と再会する。
姉・藤野は旅先で死んだ父親の跡を継ぎ、商人になっていたのだ。姉との再会で杜鵑女の心が少しだけ軟化する。
しかし、既に運命は動き出していた。
杜鵑女はどうしても桔梗を亡き者にすべく、滋養薬の中に酸漿根を入れる。酸漿は堕胎に用いられる劇薬だった。
その行為を館の監査役である小野寺源治に察知される。
雪路の怨霊は、おように憑依することで、生前のような知能を回復する。次々に祟りをなし、一人ずつ城の人間を殺して行く。
桔梗は床に伏したままとなる。
桔梗がまさに息絶えようとした時、福田館の手勢が釜沢に寄せて来る。
桔梗は重清に「少しだけ傍に居て」と乞い願うが、重清はその桔梗を置き去りにし、合戦に向かう。
残された桔梗は一人きりで死んで行く。
雪路は桔梗を殺しても満足せず、正体を露にして、館内の人々を襲う。
雪路はおようの口を通じ、杜鵑女に自身の死の理由を問い質すが、それを小野寺源治が耳にする。
杜鵑女が雪路を封じるため祈祷に専念する間に、源治は重清にことの顛末を報告する。
釜沢館の内と外で嵐が吹き荒れる。
ちょうどその頃、奥州仕置きのための遠征軍が上方を出発する。
その後には裏切りと屍の山が築かれる。
そんな展開になる。