日刊早坂ノボル新聞

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◎北奥三国物語 鬼灯の城 其十 怨霊 (要約)

◎北奥三国物語 鬼灯(ほおずき)の城         早坂昇龍

 其十 怨霊 (要約)

 九戸党による「三城攻撃」を発端とする攻防戦が一段落すると、合戦は小休止に入った。

 そこで、南部信直は、北信愛、浅野庄左衛門に諮り、関白秀吉の許に使者を送ることを決めた。この上洛部隊は、名代を子の利直とし、随行に北信愛を置く。さらに浅野家家臣の庄左衛門が交渉を補佐するものとした。

 京へ派遣する目的は、上方軍の遠征を請うものだ。

しかし、関白は意に添わぬ者を容赦なく殺す「痴れ者」であるため、この陳情自体により信直が無能と見なされるかも知れぬ。

このため、信直は大いに緊張した。

 浅野庄左衛門は二人に向かって、「九戸も天下の逆賊だが、釜沢淡州こそ武士の世を脅かす者」であると説く。

 

 その頃、釜沢館を伝令が相次いで訪れた。

 八戸薩摩(政栄)が櫛引兄弟を攻撃するにあたり、重清は八戸と櫛引の双方から援軍を求められたのだ。

 重清はそれまで双方と良好な関係にあり、要請を無視するわけにはいかない。

 遂に重清は何れかの陣に参陣することを決意した。これは同時に、八戸・櫛引だけでなく、三戸九戸の何れかに加担することを宣言することになる。

 出陣に当たり、重清は杜鵑女に神の宣託を求めた。

 すると杜鵑女は「八戸薩摩の側に立て」と答えた。

 重清がこれに同意し、北館を出ようとすると、桔梗が現れる。

桔梗は平伏し、「櫛引左馬之助(清政)さまをお助け下さい」と乞う。

その話を杜鵑女が耳に留める。

 杜鵑女は重清がこの女子の言葉に惑わされ、己のあるべき運命を損なうのではないかと危惧する。

 

 重清らが西之沢に達すると、櫛引清政らが落ち延びて来るところに出会う。

 清政は「八戸に反撃するため、この場は見逃してくれ」と重清に願う。

 重清はそれを受け入れ、清政を見逃す。

 重清が法師岡館に着くと、八戸軍が包囲戦を始めるところだった。

 八戸直栄は策謀を巡らし、館を攻略した。

 この館を守っていたのは、清政の妻である篠だったが、少数の手勢ながら八戸と正面から戦い戦死した。

重清はその一部始終を見届ける。

 

 重清が家来数名を連れて釜沢に帰ろうとすると、西之沢の近くで毘沙門党の紅蜘蛛に会う。紅蜘蛛は福田治部の家来と争い、手傷を負っていた。

 程なく追手がその場に到着するが、行掛かり上、重清はやむなくその追手を殺した。

 しかし、追手の一人が重清の刃を逃れ、福田館に逃げ帰った。

 

 杜鵑女は重清が自分との約束を守らず、櫛引を討たなかったことを知り失望する。

そこで、重清を惑わす桔梗を「悪の根源」と見なし、この女を呪い殺すことにした。

 杜鵑女は重清の先妻である雪路の霊をおよう、みちの何れかに降ろし、雪路に桔梗を殺させようと考える。

 おようとみちは女中であると同時に、杜鵑女に従う巫女でもあった。

 厳しい祈祷の果てに、雪路の霊はおように降りた。

 雪路の怨霊は、己の死後、桔梗が重清と睦み合っているのを知り、この女への憎悪の念を滾(たぎ)らせる。

 

 一方、福田館では、賊に倒された家来の一人が「カマザワが手を下した」と言い残したため、重清の関与を疑う。

 釜沢館の内と外の両方から、重清に最大の危機が迫って来ていた

 

次章 「鬼灯」の展開

 釜沢館が平時に戻ると、桔梗は重清に「やや子を孕みました」と告げる。

 それと同時に、桔梗は少しずつ、他の側女の排斥を始める。己の子は嫡子ではないので、これを必ず嫡子にさせるためである。

 重清は桔梗の変貌に少なからず驚く。

 福田館の偵察が来て、重清の関与を確かめる。福田は釜沢の近くに兵を伏せており、関与を確かめると、即座に釜沢への攻撃を始める。

 その合戦の最中、雪路の霊は桔梗に取り憑き苦しめる。杜鵑女は雪路を操り、桔梗を亡き者にしようとする。

 一方、上方では、関白秀吉が奥州での一揆の情勢を聞き、これに激怒する。

秀吉は「その九戸とやらを含め、このわしに不平を漏らす者は悉く撫で斬りにせよ」と命じる。

二度目の奥州仕置き令が発令され、遠征軍が組織される。

 釜沢館の内外で怨念と憎悪の嵐が吹き荒れようとしていた。