◎幽霊が他の幽霊を同化吸収する目的
スペインにはすごく怖いホラー映画がある。ハリウッド・ホラーと全然違うのは、あの世を正面から信じていることと、「都合の良い結末」にしないことだ。
エンディングに至っても、主人公が救われず、悪縁に「負ける」ことがよくある。
たぶん、実際に体験した人が多いのではないかと思うが、描き方がリアルだ。
数日前にスパニッシュ・ホラーを病院のベッドで観たが、血圧が二百二十まで上がってしまった。
題名は忘れたが、映画の中では「幽霊が他の幽霊を吸収して、より強くなる」という展開があった。この辺はすこぶる現実的だ。
ひとが自我の所在を確認するのは、専ら五感による。
死ねば肉体が無くなるから、自分を確かめることが出来ず、次第に自我は崩壊して行く。
これを防ぐために、自我を強化することを目的として、他の幽霊を取りんで、それと合体する。
(この場面は、神殿のガラス映像の中に幾度も見て来た。)
言わば、自我を生き残らせるために、他の者(の心)を得て、吸収・合体する。
ところが、ひとの本性は基本的に悪だ。誰の頭の中も悪心が溢れている。この悪心が五感とは別の自我の拠り所のひとつでもあるので、同化と合体を繰り返すと、自然に幽霊は悪霊化する。
自我が強化されると同時に、姿かたちも大きく鮮明になる。
何十、何百もの魂を吸収した後の姿が「でっかい女」であり、「アモン」のような悪縁(霊)だ。
よく観察すると、「同化」といて言っても、元の幽霊が消えて無くなるわけではなく、「でっかい女」やアモンの中に残っている。あくまで従属する立場で、主人に統括される奴隷の境遇のようだ。
悪縁は生きているひとの心にも寄り付くが、理屈は幽霊を取り込む時と同じだ。共感(多くは悪心)を手掛かりに心の中に入り込む。同調を繰り返すことで、いつの間にかひとの心を支配してしまう。人間は従属する立場になり、悪縁の自我の存続に寄与する。
こう考えると、これまで画像に残って来た幽霊の振る舞いが説明できると思う。