◎実際に体験した「ちょっとだけ怖い話」
幽霊について、怖ろしい局面だけに眼を注ぐのは、あまり適切ではないと思う。
ライオンや鰐は怖ろしいようでいて、実は自分なりの生を生きているだけだから、ライオンや鰐そのものを怖ろしい存在と見なすのは、確からしい見方ではない。
幽霊もそれと似た面があり、体を失ったことで、「自我が徐々に消えゆく状況にあって、その自我の存続をはかろうとしている」だけだと見なせば、それほど怖ろしい存在ではなくなる。
とはいえ、今は夏だし、怪談の季節でもある。
脚色を避け、事実を中心に記述し、末尾に幾らか考察を加えるものとした。
1)カーナビが山中に導く話
この体験は幾度もブログに記した。
東北のS市とは、どうも馬が合わぬ時期があったようで、幾度か不可思議な体験をした。これはそのうちのひとつ。
小腹が空いたので、食事をすべくS市内に入ったのだが、既に夜半だったので、大半の飲食店が閉まっていた。
そこで幹線道路に戻るべくカーナビを設定したのだが、これが誤作動を始めた。
道に不案内だから、違う道を走っていることには気付かない。
東京方面行きを設定したのだが、方向がまるで逆で、どんどん山の中に入って行く。
二車線が一車線になり、市道から、ついには林業用道路に入った。
「おかしい」と思ったが、進行方向を示す青いラインが、その先にずっと続いていた。
「山を越えるとバイパスでもあるのか」
そう考え、それに従うと、ついには道路幅が車の幅に近くなり、左右の草が車の脇腹に当たるほどになった。
そして、先がどうやら突き当りになりそうな気配がしたところで、突然、カーナビの進行路指示がパッと消えた。
画面は、全面まっ暗で、道の無い山の中に、自分の車のマークだけがぽつんと点いている。
ちなみに、行き止まり近くに達してはいたが、青い線が消える直前には、その先に進むように指示されていた。
その先はおそらく崖の下だ。
おどろおどろしい気配などはまったく感じぬのだが、しかし、その一方で「何者かの強い意志」を感じたので、急ぎキヤをバックに入れて山道を降りた。
この時に、慌てていれば、途中の崖で斜面から転がり落ちたかもしれん。
方向転換をするスペースなどは全くなかったので、七八百㍍ほどバックで戻り、山道が交差したところで向きを変え、逃げ帰った。
この時、割と冷静だったのは、過去にも同様な経験をしたことがあったからで、この同じS市で、「カーナビの指示で行き着いた先が墓地」だったこともある。
こういう時には、恐怖心が最大の敵で、その場から逃れようとアクセルを強く踏み過ぎると、事故を起こしてしまう。
そしてそれが「何者か」が本来目的としたものだと思う。
画面が一瞬にして、真っ暗に転じた時には、鳩尾が冷たくなった。
途中で何かしらの異変が始まっていたなら、そもそも指示には従わなかったと思う。
終始無言で、気配すらなかったのだが、そのことが逆に「強い悪意」を感じさせた。
ちなみに、この後、十日間で二度、後続車に追突された。
まるで、私の車が見えぬかのように、車がブレーキをかけずに突っ込んで来た。
修理に出すと、車が戻ったその日に、また追突。
さすがに、この時には神社でお祓いを受けた。
(時間が経過したこともあり、一度目と二度目の体験が少し入り混じったかもしれぬ。)
以下、時々追記するが、いずれも実体験なので、面白おかしく脚色するなどはしない方針だ。
同時進行中には、異常な事態が起きているとは気付かずに、後になってから「あの時は理不尽なことが起きていた」と気付くことが多かった。