日刊早坂ノボル新聞

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◎病棟日誌 悲喜交々 8/31 「女芸と手練手管」

病棟日誌 悲喜交々 8/31 「女芸と手練手管」
 朝夕は少しずつ涼しくなって来たが、日中はとにかく暑い。数分外を歩くと、具合が悪くなる。
 「今の俺の状態は、道をヨレヨレと歩く高齢者そのものだな」と痛感する。
 若い頃によくそんな人を傍観者的に眺めたもんだが、今や自分がその立場。
 実年齢よりも数段よれていると思う。

 この日は少し早めに行ったので、ガラモンさんのベッドのところに行き、キャンデーをおすそ分けした。
 「いつものところに姿が見えぬから、俺はまた死んじゃったかと思って心配しましたよ」
 生き死にの話は、病棟内では禁句なのだが、当方はそんなのは知ったこっちゃない。
 人によっては、軽口を上手く受け取れず、当方も表現下手なので、後段の「心配した」が伝わらぬことがある。もちろん、こっちが本心だ。
 ま、当方の場合言葉の九割がブラフで変化球だから、真面目な人だとたちまち腹を立てる(やったぜ)。
 だが、さすがガラモンさんは苦境を乗り切って来たから、その辺は分かっている。ニコニコ笑っていた。

 このオバサンは元のダンナが九州の資産家の息子で、結婚した後もダンナの「飲む打つ買う」が止まらなかった。やっぱり離婚したが、先方の親から「うちの息子が迷惑をかけた」と謝られたそうだ。
 「そのお詫びと孫のために、マンションを買ってあなたに差し上げます」
 義親はそう言うが、後段の「孫が苦労することがないように」というのが底意だと分かったので、受け取ることにした。
 「ではこれを」と言うので、「どこの部屋」かと思って物件を見たら、この場合の「マンション」は「ひと部屋」のことではなく、「一棟」だった。
 五階建てのビルを貰ったので、自分が最上階に住み、一階では商売を始めた、とのこと。九州の義親は相当の資産家だった訳だ。
 こんな郊外でも、埼玉で「五階建てマンション」なら土地代もあり、一億二億では到底建たんよな。
 ガラモンさんは、マンション賃貸の収入で生活には困らぬが、一階ではブティックやらスナックをやっていた。どこかの元総理大臣の奥さんみたいな振る舞いだ。
 心停止の後、バイパス手術を受け生還したが、「さすがにキツくなったので会社経営はやめた」、とのこと。
 店をやっている時に「遊びに来れば?」と言われていたが、当方は既に外では飲まなくなっていたから、結局行かずじまいに。行って、口説いて見れば喜ばれたかもしれん。幾つになっても女性は女性として扱うのが筋だ。ま、「話だけ」が前提なので「良いですよ」と言われたら、逆にドギマギさせられたかもしれん。

 あと、ひとは見かけと内面は全然違うから、外見がガラモンでも、その実、情が深かったりするかもしれん。細やかな気遣いなどは、「オバサンの得意芸」だから、気が付いたら嵌っていたりする。こういうのは要注意で、オヤジは警戒が必要だ。
 ごく普通の主婦みたいなオバサンなのに、心遣いが細やかで、かつとんでもない床上手だったりする。芸者さんの世界では、男あしらいの技術をきちんと教えるそうだが、女子を見た目で判断するところで止まっていると、オヤジになっても天かすと海老天の違いがわからないままでいたりする。

 その手練手管の延長戦上に、筧千佐子とか木嶋佳苗がいるわけだが、こいつらは、切羽詰まって殺人まで行い、捕まっているから、全然「低レベル」の方。筋金入りの「女の達人」は、男が金を払って「喜んでいる」から、そもそも騙していないので、詐欺にはあたらなかったりする。
 この場合、「セックスもしていない女子に憶の金を与えて、それだけで満足する」ことがあるのだが、それだけの価値を感じさせる女性だということだと思う。
 木島佳苗と交際のあったオヤジの証言を見ると、「とにかく優しくて誠実」だと言う。もちろん、言外に「その人の前では」という修辞句がつく。もちろん、床も上手だ。オヤジが嵌るのは、「床上手」だってのが前提にある。
 ま、「男あしらいには技術がある」と、オヤジの方が分かっていれば、深入りすることはないのだが、真面目に人生を過ごして中高年になったところで、「女芸」のプロに当たったら、ひとたまりもなくやられ、家庭が崩壊すると思う。
 その意味では、風俗だけではなく、芸者さん方面の道を少しだけ齧るのが人生経験で役に立つ(違うかw)。
 ま、一番のめり込まされるのは、「若くて美人」では到底なくて、四十台五十台の手練手管だ。若いのは「食ってみたら秋刀魚の干物」だったりするが、女芸が達者だと「鯛」など高級魚の味がする。味は外見とは関係なく、ソエは見た目ブチャイクだが、食えばトンデモなく美味い。

 この病棟にいる師長は、たまに風俗に行くくらいで、あまり遊んだことが無いから、オバサンの女芸を知らない。「女芸」とは言葉遣いから物腰、床での内容まで含め、総合的な女子力のことだ。
 師長は基本が真面目だから、やはり若い子の方に目が行く。
 思わず「チミの場合、ガラモンさんみたいに世間と男を知るオバサンの手にかかったら、二分で捻られると思う」と教えたが、たぶん、意味が分からない筈だ。
 ま、女子だって、教えてくれる人がいなければ、世間のオヤジと同じようなものだ。心遣いを示さず駆け引きが下手で、自分本位。加えて「チン※あしらい」も知らぬ「大マグロ」だったりする。寒い。
 もちろん、モデルさんみたいに痩せてスタイルのきれいな「干物」の方を好む男の方が多いとは思う。女性に惹かれる根本は性欲があるが、これは繫殖が目的だから、「あまり使われていない新鮮なヤツ」を求めるのは本能のようなものだ。

 かなり脱線した。
 画像はこの日の病院めし。鶏ささみ肉のソテーがメインだが、三切れは各々がひと口分のサイズだ。ご飯一杯を食べるのに苦労する。
 デスクワーカーだと、一食の必要十分量がこれくらいだから、普段は食べ過ぎだと教えるために、通院患者なのに食事を出すようだ。これくらいは食べて良いという目安になる。
 固定客なので、食事料金は請求されず、サービスだが、入院患者と職員食堂用に沢山作るから無料でも平気らしい。
 フルーツは缶詰だが、この配置で「いつものオバサンの手ではない」と分かる。
 「きれいに並べる」という「心遣い」は「女芸」のひとつ。
 ささいなことのようだが、これが一つひとつ積み重なるので、総合的には「他の女性とは全然違う」印象を与える。