◎夢の話 第1K99夜 「腹を立ててはダメ」
二十三日の早朝に観た夢です。
我に返ると、どこか知らぬパーティ会場にいた。
「これは広尾あたりのホテルだな」。フロラシオンだったか。
しかし、私は既に社交を一切止めている。出家したのと同じで、他者との交流を避け、治療に専念している。
「もはや棺桶に足を突っ込んでいる者が、パーティに出るわけがないな」
おかしい。
(だが、まだ自分が夢の中にいると気付いてはいない。)
少し離れたところに見覚えのある顔がある。
「ありゃ、あれは大学の同期の・・・」
なら、その関係のパーティなのか。
だが、他の人についてはまったく見覚えが無い。
すると、私の近くに四五人が集まり、その同期知人について噂していた。
悪口・陰口の類だ。
「ああ、こいつらは同業者なんだな」
自分に近い者については、一挙手一投足が気になるものだ。
別に、酒の上で誰かの陰口を言うのはよくあることだ。ごくフツー。
だが、陰口と言うには、声が大きかった。
会場が広く、皆があちこちに移動して会話をしているから、誰がどこにいるのかが分からない。
私の知人がたまたまあのグループの近くに寄ったが、そのグループはそれに気付かず、再び知人について批判めいたことを話していた。
「ああ、あれでは本人に聞こえるだろうな」
やはり、当人も気付いたようで、少しく顔色が変わった。
私は内心で、「腹を立てたらダメだよ。悪口陰口は助言と同じ。誉め言葉には嘘が多いが、悪口はその人の本音を語っている。自分がどう見えているかを知る機会になるから、教えてくれて有難うと思うといいんだよ」と心の声を掛けた。
ここで隣を見ると、すぐ近くに高齢の男性が立っていた。
男性はじっと知人の方を見ている。
「何か関わりのある人なのだな」
どこか心配そうな表情だ。
ここで、私は「この人は俺と同じことを考えている」と気付いた。
おまけに、この一心不乱の表情は、生きている者の顔ではない。
ここで「あ、親族なんだな」と気付く。
正確なことは分からぬが、この数年内に亡くなった身内だ。
兄弟ではないだろうから、親御さんかもしれん。何かを案じて、息子?を見に来ていたのだ。
ここで視線をまた知人に向けた。
やはり知人は自分への口撃に気付いている風情だった。
私と違い、まだ現役だろうから、色々大変だろう。
でも、腹を立ててはダメだよ。
言葉にすると、「上から口調」になってしまうだが、こちらは既に「出家同然」または「ほぼ死人」の状態だ。
ここで覚醒。
夢に登場した人物が、具体的に特定可能な人物だったので、しばらく思案したが、ひとまず当人にもそれとなく伝えることにした。これは身内の人の心配そうな表情に心動かされたためだ。
身内の方については言及しなかった。たぶん、お父さんだと思うが、あくまで夢の話だから正確ではない。
まだご存命なら、目も当てられない。
夢はストレートに現実に結びついているわけではないから、正夢だったとしても夢の中で生じた出来事がそのまま現実になるわけではない。
示唆は「その知人の近くに悪意が寄せられるから動揺せぬこと」だが、一応は事故などにも気を付ける必要がある。交差点や駅のホームでは、最前列に立たぬこと。悪意が具体的なかたちになることもあるからだ。
さて、昨夜、叔母から電話があった。父が亡くなる「ひと月前にそれを知り、兄に連絡した」ことが話題になったそうだ。
実際、私は兄に「親父の具合が悪くなるので様子を見て欲しい。俺もこんな状態だから何かあってもそっちには行けない。親の葬式にも出られぬが、親父の『俺より先に死ぬな』という言い付けは守る」と伝えた。
叔母も私と似たような性質だから、連絡してくれたのだった。
グリーンカードを貰ったので、観たもの聞こえたものを幾らかは伝えることにした。
もちろん、当たり障りのない範囲内で、ということではある。