日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第1104夜 骨董店にて

夢の話 第1104夜 骨董店にて

 記載が前後するが、これは三日の午前三時頃に観た夢だ。

 

 自分自身の遺産分与分譲をして来たが、それももうほぼ終了だ。

 あとは不動産の登記を息子に書き換えれば総てが終わり、いつ死んでも構わない。

 雑銭やら古民具が幾らか残っていたので、知人の骨董女店主に差し上げることにした。

 長年の付き合いなので、特に特別な理由はない。女性と言ってもそもそも二十歳くらい年長だ。

 

 店頭を訪れたが、店は開いているのに人影がない。

 鍵が開いているのに、中に人がいる気配がまったく無いのだ。

 「どうしちゃったんだろう。不用心だな」

 ま、今、店にあるのは殆どガラクタで、盗まれる心配も無さそうではある。

 「小母ちゃんに色んな品を上げようと思って来たんだが」

 

 すると、ここで十数人の集団が店に入って来た。

 皆が黒い礼服を着ている。

 あれあれ。もしや・・・。

 黒服の人の中に、顔を見知った人が数人いた。

 「今日は?」と訊ねてみる。

 すると、一人が答えた。

 「小母ちゃんが亡くなったんだよ。あなたもそれで来たんじゃないの?」

 「いや、たまたま小母ちゃんのことを思い出したので、久々に来てみたのです」

 すると、もう一人が口を挟む。

 「それって、きっと虫の知らせってやつだよ。長いこと会ってなかったんでしょ?」

 そう言えば、最後に会ってからかれこれ三十年近くは経つぞ。

 

 この時、脇で会話を聴いていたオヤジが起こったように言う。

 「虫の知らせなんてものはない!」

 なんだコイツ。俺自身はそんなことなどひと言も言っていないぞ。

 ま、自分が理解できないことはとにかく否定し、相手を嘘つき呼ばわりする者はよくいる。

 だが、それ以外にも理由がありそうだ。

 

 ははん。こいつらは骨董界にはよくいる『葬式友だち』だな。

 生前には、見舞いひとつ寄こさぬのに、葬式の席では「個人と仲良くお付き合いさせて頂きいました」と遺族の傍に寄って来る。ま、遺品が目当てだ。

 コレクターが死ぬと、その直後に「友だちが百人に増える」と言うのはこのためだ。

 幾人かの遺品整理の手伝いをしたことがあるが、死に間際まで一切寄り付かなかったくせに、葬式の時にはいそいそとにじり寄る人が沢山いた。

 他人の収集品からこっそり抜き取って行くヤツは山ほどいるが、死んだ後もこうやって「何か抜けないものか」と寄って来る。これがコレクターの性癖だ。

 口に出しては言わなかったが、俺は全部見ていたぞ。「気付かれていない」と思うのは自分だけ。

 ま、いずれ俺が死んだ後に散々な罰を当ててやる。俺はあの世とこの世を行き来する方法を模索しているが、そろそろできそうな感じになって来た。

 

 こんな奴らとは数分も一緒に居たくないから、とっとと帰ることにした。

 日を改めて、小母さんの墓参りに来ようと思った。

 ここで覚醒。

 

 眼が覚めて、直ちに思ったのは、「あの小母ちゃんが亡くなった」ということだ。

 年齢的にかなりの高齢だから、そろそろそういう時が来てもおかしくはない。