◎夢の話 第1K59夜 「母死す」
二十三日の午前三時に観た夢です。
「プルルルル」と電話が鳴る。
受話器を取ると、電話を掛けて来たのは兄だった。
「お袋が亡くなったから」
「そうか。よく頑張ったな」
母は末期癌で半年入院していた。
半ばは覚悟していたが、さすがに気落ちする。
「前の時は傍で看守っていられたが、今度は俺がこの調子だから」
前に母が死んだ日には、俺は病院にいた。
既にひと月前から食事が何ひとつ喉を通らなくなっていたから、いずれその時が来るのは知っていた。
母は死を迎える日も自分でトイレに立っていたので、それがまさかその日だとは思わなかった。ま、それも数日の違いだったろう。
今回、俺は病院を出たり入ったりしていたから、移動に耐えられない。
「俺は葬式にも出られない状態だよ」
すると兄が答える。
「ま、今回は無理をしなくていいんじゃね。二回目だし」
「では、息子をこっちの代表で送るから、墓参りに連れて行ってくれ」
ここでさすがに気付く。
「これは夢だな。お袋はもう三年前に亡くなっている」
自分が死ぬ夢は吉夢のことが多いのだが、肉親が二度亡くなるのはどうなんだろ。
「お袋のことではなかったりするかもしれん」
ま、かなり近いのは、父よりも俺の方だな。
また、お迎えが来るのか。夢の中の俺と母は一体の存在だから、もしや予知夢か。
「ああ。もう彼岸じゃないか。それで母のことを気にかけているのだ」
墓参りに行きたいが、旅の出来る状態ではないからな。
窓の外を見ると、雨がしとしとと降っていた。
ここで覚醒。
急に寒くなって来たので、不整脈が始まった。
睡眠中にどこどこと太鼓を打つので、その都度目を覚まさせられる。
墓参りには行けぬが、どこぞの寺でお焼香をしようと思う。