日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第734夜 退院

◎夢の話 第734夜 退院
 私は、起床直前に観ていた夢を、ほぼ完全に記憶したまま目覚めます。
 そんな夢のうち、テーマやストーリーのある夢については、すぐに記録することにしています。

 11日の午前4時に観た短い夢です。

 母が退院することになった。
 俺が病院まで迎えに行くことになったが、その前に介護施設にいる父を訪問した。
 父にその話をすると、父はすぐさま着替えを始めた。
 「俺も行く。もう随分、あいつには会っていないからな」
 
 母を車に乗せ、家の近くまで戻って来た。
 助手席の母は、顔色も良く元気そう。
 父は珍しく後部座席に座り、うつらうつらしている。

 前を除雪車が進んでいるが、道幅が狭いから追い越すことが出来ない。
 「三月なのに、どこへ行って来たのだろ」
 見たところ、周囲に雪は見えないが。

 周りの景色を見ていたが、ふと思い出した。
 「ここはお袋が迎えに来てくれた場所だな」
 俺が学生だった頃だからかなり昔の話だ。
 東京から実家に戻って来たのだが、出るのが遅くて、夜の十時過ぎになった。
上りの終電はもう終わっていて、下りだけ走っている。
 俺はひと駅前まで来たところで、つい眠ってしまった。
 気が付いた時には、「松尾」という駅を過ぎていたから、慌てて列車を降りた。
そこは一度も降りたことの無い無人駅。ホームがあるだけで、後は何も無い。 
 携帯がまだ普及していない頃だし、公衆電話も無い。
 「仕方ない。歩いて帰るか」
 たぶん、朝までには家に着くだろ。
 線路沿いの道を戻り始めた。
 すると、30分も歩かぬうちに、俺の前に車が停まった。
 「あ。お袋」
 運転していたのは従姉で、助手席に母がいた。
 「やっぱりいたね」
 俺は盛岡で「これから帰る」と電話をしたが、なかなか戻って来ないので、母は「たぶん、乗り越した」と考えた。
 その夜は、たまたま従姉が来ていたから、その従姉に頼み、「迎えに来たのだ」と言う。

 「あの時、何でお袋は、俺がこの道を歩いていると判ったんだよ」
 どの列車に乗る、とか言っていなかったし、線が違えば、終電はまだあった。
 俺がこの道を歩いて帰っていることを、母はどうやって知ったのか。
 それから数十年経っても、謎のままだ。

 俺の問いに母は答えず、ニコニコと微笑みながら前を指差した。
 「気を付けるんだよ。ほら」
 前の除雪車がすぐ直前で方向転換をし、後ろ向きに走り出す。
 「何だろ」

 母は久々に顔色が良く、頬に赤味が差していた。
 随分久し振りだ。
 ここで後ろから、父が声を掛けて来た。
 「今日は三月十七日だな」
 「うん」
 父は最近、トシのせいか、物忘れが進行している。
 昔のことは思い出せるが、最近のことが良くわからない。
 それでも、気になることがあるのか。

 父が続ける。
 「すると、今日は恵子の命日だよな」
 この時初めて、俺は母が亡くなっていたことを思い出した。
 ここで覚醒。

 母はまだこの世に留まっており、今は頻繁に当方の許を訪れている模様です。
 亡くなって暫くは、病気で体の具合が悪い感覚にとらわれていたようですが、最近になり、それも無くなって来たのではないかと思います。
 程なく、母との二度目の別れが来ると思います。

 結局、母は、何故「息子が夜道を歩いているのを知った」のかを語らぬままでした。