日刊早坂ノボル新聞

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◎ノスタルジア食堂 「支那蕎麦」

ノスタルジア食堂 「支那蕎麦」

 看護師のユキコさんは、「ラーメンで最も食べたいのは、昔ながらの醤油味の支那蕎麦だわ」と言っている。これを求めて、「支那」蕎麦専門店に行くらしい。ユキコさんは五十台でさもありなん。

 当方も「ラーメンの本筋は支那蕎麦」派だ。

 海鮮出汁がどうのこうの、豚骨がどうのこうのも結構だが、鶏ガラ醤油出汁の「支那蕎麦」が本筋だと思う。

 それもおざなり的なつくり方をする町中華支那蕎麦にノスタルジアを覚える。

 小学生の頃に、母親が長期入院しており、月に二度くらい独りで見舞いに行った。片道90分を超えるバスの旅だったから、小学三年生の当時にはドキドキした。

 昼前に病院に着き、二時間くらい母と過ごすと、また一人で帰るわけだが、真っ直ぐは帰らずに、映画を観たり、デパートの上の方の食堂で食事をした。

 その時に、最も多く食べたのが支那蕎麦(醤油ラーメン)だった。

 当時は170円から270円の間だったと思う。(ここは十年くらいの期間があり値段が変わった。)

 盛岡市内でよく食べたのは、サンビルの食堂か、大通りのラーメン専門店でだった。小三の子どもがカウンターやテーブル席に座り、ごく普通に注文した。

 補導員に質問されることもあったが、平然と「今、両親は買い物をしています」と答えると、無難にスルーできた。

 母に会った後、一人で食べるラーメンはもの悲しくて、まさに心が千々に乱れた。

 それが懐かしくて、時々、大型ショッピングモ-ルのフードコートに行き、「醤油ラーメン」を食べる。

 出汁が薄くて、味自体は美味しくないわけだが、ノスタルジア的には充分だ。

 これを食べると、母の一つひとつの思い出が鮮明に蘇る。

 オヤジジイが密かに涙を零すのはこの瞬間だ。