◎病棟日誌 悲喜交々2/8「包帯取れる」
この日から、正式に抗生物質の点眼と、両足の包帯が無くなった。
足指は、まだ痛みが残っているが、傷が塞がり乾いている。組織が溶けて凸凹だが、大工さん用の厚い靴下を履けばまあナントカ。
医療上の病因は「動脈硬化による壊死」だが、現状では血が通っている。ふた月前に殆ど同じ状態だった、先輩患者のNさんは、回復できずに、足指か足か、あるいは脛から先を斬ることになったようだ。見た目は殆ど同じで、足の半分は紫色だったが、私の方は、想像した通り、「動脈硬化の進行」が招いたものではなかったようだ。
そもそも廃病院で事務棟を見上げた、その日の夜にはそうなったから、わずか半日で両足が紫に変わった。
薬がまったく効かぬので、「有機体要因ではない」ことを想定して、「ご神刀斬り」を始めたが、この後好転した。
ま、実際のところは分からない。
状況的に、動脈硬化の進行は避けられぬし、いずれは足を切ることにはなる。それが今ではなかった、ということだけ。
帰路、「現状は果たして『よくなった』と言えるのだろうか」と考えさせられた。
眼も足も、半年前の状態に戻っただけだ。
だが、若者とは違い、私のところまで来ると、もはや良くなることはない。なるべく現状より悪化しないように、あるいはゆっくりになるように暮らすことが肝要だ。
まだ生きていられるだけ有難い。
日に少しずつだが、原稿の執筆を再開した。
これは一年前にも、二年前にも考えられなかったことだ。
ま、先は限られているのだから、断捨離は継続することに。