バイクに乗っているうちに、ガス欠が近くなっていることに気付きました。
道筋の先にスタンドが見えましたので、そこで補填しました。
再び走り出すと、住宅地に入ったところで、足元のエンジンの下の方から炎が噴出してきました。
「ありゃ。これはヤバイ」
バイクを止め、火を消そうとするのですが、革ジャンで叩いてもなかなか消えてくれません。
すると、近くの家から、騒動を聞きつけた若者が現れ、「これを使うといいよ」と消火器を差し出しました。
「どうもすいません」
消火器を受け取り、シューッと吹き付けると、ようやく鎮火。
いやあ。火事にならなくてよかった。
ほっとしたのもつかの間で、道のあちこちに小さい炎が立っています。
「あれれ。何だコリャ」
タンクに穴でもあいていて、ガソリンが落ちた所に引火したのでしょうか。
消火器は小型で、中は既に空だったので、再び革ジャンでバタバタ叩きます。
「水でもぶっかける?」
さっきの若者が、外の蛇口に繋いだホースを握っていました。
「火のついた油に水を注ぐのは不味いのではなかったかな」
ここに、脇から現れたオバサンが口を出します。
「これくらいの小さな火なら、回りを冷やせば消えてしまうものよ」
そうですか。やってみよう。
火の周りから徐々に水をかけると、しばらくは燃えていましたが、だんだん消えていきました。
「コンクリの上でなくてよかったね。火を乗っけたまま水が流れるところだった」
今度は別の叔父さんが横から口を出しました。
火事にならなくて良かったと、口々に言い合いながら、人が散っていきます。
ホントーに良かったなあ。
オレのバイクから出た火で、この辺一帯を丸焼けにするところだった。
溜息をつき、何気なく上を見上げると・・・。
近くの家の屋根に20センチくらいの火が見えます。
「わわ。こりゃいかん!」
大きな声を上げようとしたのですが、よく見ると、その火は少しずつ移動していました。
じっと凝視すると、その火の塊の上にはなにやら顔のようなものが付いてます。
黒い頭は、コウモリのような形です。
「あれって、妖怪ですかね」
隣で先程の若者が訊いてきます。
「どうやら、そのようだ。すぐにあそこの家に教えてあげないと」
すぐさま若者がその家のチャイムを鳴らし、注意を呼びかけています。
よかったなあ。オレが原因でなくて。
バイクから火が出たのではなく、あの妖怪が付け火をして回っていたのでした。
ここに若者が戻ってきました。
「スゴイですね。ああいう生き物もいるんですね。写真を撮っとかないと」
若者は携帯で撮影を始めました。
ああ、そういえばデジカメを持ってたな。ムービー録画で撮っておくか。
撮影を始めると、再び周囲に人垣が出来始めました。
ここで覚醒。
夢の内容が一体何を象徴しているのか、まったくわかりません。
妖怪は、コウモリの頭だけが動物的で、胴体と翼は総て炎でした。