日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第220夜 幟旗を高く掲げて

昨夜、夕食後に仮眠を取った時に見た短い夢です。

「この世にはびこる不正を糺すため、皆で江戸城に行き、将軍様に訴え出よう」
その声に集まったのが、3千人を超える侍と百姓たちです。
隊列を組み行進を始めますが、早速、「役人たちが竹柵を張り巡らせ、待ち構えている」という情報が入りました。

そこで、統領が決断します。
「ひとまず大阪に向かおう。そこで兵糧を確保し、賛同する者をさらに集め、もう一度江戸を目指すのだ」
「はい」「はい」
私はすぐさま立ち上がり、幟旗を立てました。

統領とその1人息子を中心に置き、両側には旗持ちたちが並びます。
その周囲を、三百人からなる侍たちが囲み、父子を守ります。

我々に未来はありません。
大阪に着く前に殺されてしまうか、江戸に向かう途中で幕府軍と交戦することになるでしょう。
もし、奇跡的に、江戸城に着き、さらには陳情が受け入れられたとしても、首謀者はいずれにせよ打ち首となってしまうのです。
このため、この一揆の中核を形成する侍たちは、必ず死ぬ運命です。

「だがやらねばならないのだ」
統領が呟きました。
「飢饉が十年も続いているというのに、役人は行いを改めない。不作で税収が上がらないことを理由に、税率を上げ続けている。本末転倒だろう。民百姓の上に国があるのではなく、民を守るために国はあるのだ」
統領は、この一揆の目的は「下々の民を守るためのものだ」と言います。
役人や侍は民を守るための存在なのだから、そのためには「命を捧げて当然」なのだ、と。

かたや、金持ちたちは、今の危機を利用して、蓄財に励んでいます。
飢饉で立ち行かなくなった人々に高利の金を貸し付け、返せないと、財産を取り上げる。
餓死寸前の一般大衆と、奢侈な生活を送る金持ちの差がどんどん拡大していきます。
このまま許すわけには行きません。

よって、何人かの豪商を血祭りに上げ、その米蔵を開け、民に配ることも目的のひとつです。
このため、その意味でも、大阪に行く必要があるのです。
上級役人は豪商と結託していますので、我々の一揆により「良心に目覚める」なんてことは起きません。
政の仕組みを変えない限り、変化はわずかです。

ならなおさらのこと、我々のような下衆侍が立ち上がらねば。
私は腰に回した縄の間に、旗竿の根本を縛り付け、皆に良く見えるように幟を高く掲げました。
「さて、出発だ!」

ここで覚醒。

これは私にとっては特別な夢です。
十数年前に、古道具屋の片隅で1冊の古文書を見つけました。
大塩平八郎一揆の顛末を記した文書でしたが、参加した侍の名や「何月何日にどこで何をした」という記述が事細かに記載してありました。
その文書に眼を通した瞬間に、「かつて自分はこの中にいたのではなかったか」という思いが頭を過ぎりました。
それから繰り返し、幾度となくまったく同じ夢を見ます。

夢の中での私は、大塩平八郎の左後ろで、幟竿を持っていた侍です。
その文書を引けば、正確な氏名もわかるのではないかと思います。

改めてこういう夢を見るのも、今のご時世と関係しているのだろうと思います。
長い不況と、貧乏人を見捨て、金持ちだけを生かそうとする政策。
よく似ていますね。
頭の後ろの方では「そろそろ打ち毀しに行くべき時だ」という声が聞こえます。