日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

どこまでが妄想なのか

郷里の知人が亡くなったとの話を聞きました。
知人は既に80幾つでしたが、精神病棟で最期を迎えたようです。
なぜそんなことになったのでしょうか。

事実関係は概ね次の通り。
亡くなる半年くらい前から、その知人は粗暴になった。
突然叫び出し、手当たり次第に物を投げた。
皿やコップ、灰皿くらいは可愛い方で、かなり重量のある物も辺り構わず投げつけた。
その家の家族が怪我をするに及び、ついには強制的に入院させたとの話です。

その知人が物を放った理由は、どうやら「死神が近づいたから」らしいです。
(本人がそう言ったとのこと。)
死神が自分を連れ去ろうとするので、それが怖くて、その死神に向けて必死で物を投げつけた。
回りの人には分かりませんが、本人にははっきり見えていたのでしょう。

その話を聞いていて、明治の文豪の話を思い出しました。
その文豪も、晩年になり、死期が間近に近づいた頃、ある日突然、声高に叫ぶようになった。
「お前は誰だ!」
「うるさい。静かにしろ!」
そう言って、度々、文鎮の類を庭に向かって投げつけた、との由です。

認知症になると、悪霊の類の妄想が現れるそうですが、本人には現実のように見えている模様です。
高齢者に多いので「認知症」との判断になると思われますが、実際のところ「かなりリアルな妄想」なのでしょう。
他の人には見えないし、感じられないのですから、あくまで妄想と見なされます。
脳細胞が死滅しつつある時には、知覚まで崩れてしまいます。

しかし、最近になり、それが本当にただの妄想なのかどうか、疑いを持つようになりました。
そう言えば、悪霊は「聞く耳を持ち、見える眼を持つ者の前だけに現れる」と言います。

他の人には見えないが、その当人にとっては現実そのもの。
ならば、それも現実のひとつではないかと思います。
当事者以外にどう見えているかは、その人にとってはどうでも良いことです。他人が分かるかどうかは、必要の無いものさしです。

しかし、何とも不思議なのは、まれに「妄想」の次元を超えて、他の人も知覚出来る物理的な異変が起きることです。
霊に悩まされている人に話を聞いたことがありますが、妄想とはかけ離れた現実がありました。
その当人が「出て行け!」と叫んだ時、まるでそれに答えるように、壁が「ドン」と大きな音を立てたのです。
自然現象では有り得ない音量だったので、さすがに驚かされました。

何とも説明のつかない話です。
霊感の9分9厘は妄想ですが、それで片づけられないものも現実に存在します。