◎扉が開かなくなる
先程、家人が居間に駆け込んで来ました。
「誰か洗面所にいるみたい。ドアが開かないし、何か音がする」
洗面所とお風呂場の窓はいつも開けっ放しです。
しかし、そこから中に入るのは、身長が150センチに満たないガリガリでないと無理ですね。
「それとも、幽霊かしら」
それはアリかも。
そこはちょうど「通り道」に当たっているらしく、前々からゴトゴトと音がします。
顔を洗いに行くと、ざわざわと胸騒ぎがするので、鏡の上には護符を置いています。
それを置いてからは、別段なにも起きなくなっていたのですが。
ちなみに、そのドアに鍵は付いていません。
そもそもロックできないドアなのです。
玄関の扉もたまに開かなくなることがあります。
上下の鍵を解除し、ノブを引くのですが、鉄板のようにびくともしません。
鍵が引っ掛かっている感じではなく、ドア全体が岩に貼り付いているかのようにビクともしないのです。
十秒くらいすると、スッと開くので、それも不思議。
まあ、玄関のほうは秋から冬にかけて、夜中にノックするヤツがいますので、不思議ではありません。
最近で、扉が開かなくなったことと言えば・・・。
このダンナの考えを、家人が見通しました。
「もしかして、お祖母ちゃんかしら」
今年の春、母が亡くなった時、三日後くらいの朝に、伯母がトイレに行こうとしたら、扉が開かなくなりました。
伯母が力任せに引こうとしたのですが、どうしても開きません。
内鍵が掛かっているのです。
これは時々あります。鍵の加減で、扉を閉めた時に、自然に施錠してしまうわけです。
この手のは、比較的、頻繁に起きます。
そこでその時は、十円玉を使い、鍵の中央のボルトの凹みに差し込んでノブを回し、開錠しました。
ま、あちらの家では、トイレに入る時に、誰一人鍵を掛けないので、自然施錠は考え難いところです。
「しかし、この家の洗面所の扉には鍵がないからなあ」
そこで、息子を洗面所まで見に行かせました。
誰かがいても、190センチの息子なら押さえつけることが出来ます。
また、お祖母ちゃんなら、死ぬまで孫のことを案じていたので、扉はすぐに開くはずです。
実際、息子が行き、扉に手を掛けると、すぐに開いたとのこと。
「もうお盆が来るんだね」
初盆はもうすぐです。
もし母が家族のことを案じるあまり、この世に留まっているのなら、母を送るのは私の務めです。
私には母の声を聞き届ける耳があります。