◎扉を叩く音(続)
毎年、「秋から冬にかけて、深夜、玄関の扉を叩く音が聞こえる」話の続きです。
最近、このスレッドが少なくなったが、もはや「出入り自由」の状態になっているから。
八月二十九日午後四時の記録
病院を出た後、少し買い物をした。
離れた駐車場に車を停め、家まで歩き始める。
夕方の太陽が背中にあり、自分の前に影が見える。
周囲は住宅街で、左右とも玄関が並んでいる。
角を曲がると、影が斜め前に移動した。
そこで思わず足を止めた。
明かりが太陽の日差ししかないのに、影がふたつあったのだ。
片方ははっきりしているが、もう片方は薄い。
もう一度見回したが、周囲にミラーやガラス窓は無い。
数年前に「人がいないのに影だけが存在する」というケースがあったが、今回もそれに近い状態なのか。まだ今の段階ではよく分からない。
過去の事例では、「それほど禍々しい者ではない」ことが多かったが、今度はどうか。
ところで、他の人には見えないものが見えるのは、単純に可視域の幅の違いによる。
人には特別な霊能力などというものはない。
誰もが眼で見て、耳で聞くが、「境界が少し広い」人がいて、普通の人が見たり聞いたり出来ないものまで検知できる。犬や猫の嗅覚と同じことだ。
幽界はこの世と重なっており、視聴覚とも境界線の内外に常時振れている。
赤外線を使うと、この世ならぬ存在が見えやすくなるが、「日差し」による効果で見えやすくなったなら、それも理に適っている。