◎「イリス」は三姉妹
十日には怒りに任せ、「アモン」に「俺の眼と耳を貸してやる」と言ってしまった。
通常、ひと度、こういう「約束」をすると、取り消しややり直しは効かない。
これで私は、死後、「お迎え(死神)」の仲間になるのではないかと思う。
私自身がかつて会った、あの「二人組」のように、死者の道案内をする務めだ。
昔なら、三途の川の「渡し守」といったような存在になる。
しかし、まだ現世利益を頼んでないだけいくらかましだ。お金や名誉、地位を望んで、それを貰ったりすると、そのツケを払うために「亡者」になってしまう。
悪霊の本当の怖ろしさを知っているのに、どうやら今回はしくじったようだ。
「あの世」の怖さを実感するのは、約束を口にした後、一瞬で状況が一変してしまうことだ。
つい前日までは「杖があれば少し助かる」と思うほどの体調だったが、今は普通に立って歩ける。
こういうのは逆に薄ら寒い。
さて、もう一度、画像を点検したが、左側の「女」も中央の「男」も現実に存在していたようだ。
そうなると、
1)肉眼での目視
2)ファインダを通しての目視
3)画像
で、少し層の違うものが見えるということになる。
おまけに、右の端には、どうやら「イリス」らしい人影が写っていた。
暖簾の前にシルエットが出ているから、遠くの木々がたまたまそう見えたものではない。
日中に肉眼で幽霊を見る時のような「ごく薄い影」が前に立っている。
鮮明なのは髪の毛だけかと思ったが、顔らしき位置にきちんと眼が入っている。
顔の輪郭は「たまたまそんな風に見える」だけなのだが、「眼(視線)」はきちんと存在を示す証拠のひとつになる。
あとは想像や妄想なのだが、「イリス」は一人ではないと思う。
三人(体)いて、長女にあたるのはコイツ。前に「ベラ」と仮称した者だ。
少し髪が短い「大きな女」は真ん中の妹だと思う。
末の妹はまだ特定出来ないが、三人(体)でワンセットになっている。
これ(姉妹)は血縁上の関係ではなく、序列のことを指しているので、念のため。
神話や昔話には、決まって「三人の魔女」が出て来るが、あながちまったく根拠のない想像の産物ではないのかもしれぬ。
「あの世」のスタンスは、「この世」とはまるで違う。
善とか悪みたいなものは、「この世」の話で、「あの世」にはそれとはまったく異なる理屈がある。
でもま、殆どの人が「何も見えない」と思う。
中央の「男」のシルエットが「普通の影ではない」と感じる人が少数いるくらいではないか。やはり五人から八人くらい。
無防備に姿を晒すような、ごく一般の幽霊とは違い、アモンやイリスくらいの悪霊になると、巧妙に自身の姿を隠す。
だが、声を出す時は、「これは現実なのか」と疑うくらい、明瞭な言葉を口にする。
家人は昨夜、自分の部屋でスマホを見ている時に、頭に「手」を当てられたそうだ。
ダンナ(私)はすぐに笑い飛ばした。
「別に何でもないよ。気のせいか、あるいはちょっとした幽霊だろ」
たぶん、「アモン」や「イリス」が私や私の身の回りに手を出すことはない。
もし、私に何らかの出来事が生じれば、それは私自身が招くしくじりだ。
追記)イリスの「眼」はあまり長く見つめぬ方がよろしい。
画像が悪影響を与えることは「ほぼゼロ」だが、先方から見える(見られる)人がごく少数いる。それをきっかけに、「(幽霊を)見る」頻度が増すことがある。
追記2)もしかすると、悪縁がどんどん「外に出て来ている」可能性がある。
それなら、これまで想像したよりも、数段酷い事態が待っていることになる。
ウイルスや自然災害に加える「災難」とは・・・。争乱とか戦争?
ちょっと想像がつかない。
追記3)ひとつの「ものさし」になるのが、中央の黒い人影になる。これは目視ではっきり確認できるほど強く鮮明な幽霊だ。ちなみに、目視段階では原色で見え、普通の人とまったく同じだった。
この黒い影が、「人影」で「男だな」と看取ることが出来ないと、幽霊を直接見ることは無いだろうと思う。可視域から完全に外れている。
もちろん、存在を感じられぬことほど幸せなことはない。
ちなみに、こういう感じの「黒い人影」は街中でよく見る。静止していれば分かりにくいわけだが、影が動くのでそれと分かる。
周囲が暗くなると、相対的に赤外線が区別しやすくなるので、「夜に幽霊を見る」ことの方が多いのは合理的な話だ。