日刊早坂ノボル新聞

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◎古貨幣迷宮事件簿 「J11 創作銭三種」

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創作銭三種

◎古貨幣迷宮事件簿 「J11 創作銭三種」

 こういう品は他の人に渡すと問題が起きやすい。「これは参考品ですよ」と渡しても、さらにその次の人に所有が移った頃に、「蔵から出ました」「家族の持ち物でした」「よく分かりません」と世に出て来る。

 だが、製作の研究に必要な人もいる。実際、これらを観察することで、後作品の特徴や目の付け所の勉強になった。

 この程度なら、過去に見たことが無い人でなければ、本物と見間違ったりはしない。

 これという品なら、まずは輪側を見れば簡単に分かる。

 ルーペでは見えにくいこともあるだろうから、マイクロスコープを買うと良い。たった三千円程度で、見える世界が変わる。

 創作銭であることを明記して、資料を残せば、「蔵から出ました」に心を動かされる人が減ると思う。いずれHPの方で、研究用途として売却する。

 

寛永通寶当四 逆ト原母

 面背を見ると、誰もがドキッとするらしく、先輩方からも「譲ってくれ」と言われた。拓本であれば輪側が見えぬから、余計にドキッとしただろうと思う。

 有名参考品だったようで、売価も結構な値段だった模様。

 輪側を見ると、グラインダで仕上げているから、途端にがっくりさせられる。

 こんな仕上げの品を本物と見紛う者は居ない。

 地金も作りも「背ト」の系統とはまるで違うわけだが、製作意図は何だったのか。

 大きく・厚く・角が立っている特徴は、原母の作り初めの頃のもので、汎用母に近付けるには、ここから鋳写して輪を研磨する必要がある。

 これを台にして、母銭を作り、さらに鉄銭を作ることまでを想定していたのかもしれぬ。要はこのまま写したのでは、通用銭サイズのものが出来ぬということ。

 鉄銭まで至れば、区別がつき難かったと思うが、鉄銭では素材をそれらしく鋳出すのが難しい。今とは鉄の鋳造方法が違うので成功は出来なかったと思う。

 

②O氏仰寶鋳放

 O氏作は多くの人が「とりあえず入手した」わけだが、この「鋳放し仰寶」はまだ下手な方で、事実上、練習台だ。これより精巧に出来ている希少銭種が幾つかある。

 とりあえず、この地金の雰囲気を覚えて置くと、「こういうのもあるかも」と思わずに済む。少しでも似ているだけでダメだと思った方がよい。

  豆板といえ、穴銭といえ、O氏作は精巧で、かつ何段も言い訳を講じてある。

 これが作品だと朱書きを入れてあるのは、すぐにそれと分かる品だけ。

 一度に何十枚も入札に出たところを見ると、「研究目的だった」という言い逃れは通用しまい。浄法寺系の品などは、「浄法寺銭を知る人」のいる場所を避けた地域の入札誌に出された。そんなことは知らぬから、この手の品を買ったのは地元の人だ。

 よって、「地元の人が持っていた品だから」と見なすのは禁物だ。その人も入札で買っている。

 製作をぎりぎりまで研究する他は無いが、それを面倒だと思う者は、印象だけで全部が偽物だと語る。偽物の多くは、別の土地に住む者が作っているから、例え幾ら似せていても、本物だけを見て来ていれば、いずれはそれと判別出来る。

 「一定の鑑定眼が出来るまで、本物と偽物を並べて置くな」と言われるのは、そういう理由だ。とりわけ若手は、偽物など見ずに、ひたすら本物だけを見て、収集すると良い。

 O氏作がイカサマなのは、「湯口残り」なのに、他の部分を軽く整えてあるところだ。見栄えを良くしようと思ったということで、手順が明らかに異なる。

 通用子銭を大量に作る段階に至った銭種では、未仕上げの母銭など存在しない。

 母銭製作の工程は終了しているので、総て仕上がっているか、廃棄されている。

 

③合金寛永

 このタイプはかなり前から存在しているようで、三十年くらい前にも全国の雑銭から出現している。数が目につくようになったのは二千年以後だと思うが、雑銭にさりげなく混ぜられていた。

 当初は白銅か、ことによると銀銭かもしれぬと考えさせられたのだが、机の上に放置して時間が経過しても色が変わらない。銀銭なら半年、白銅なら一年二年で黒く替わる。

 鹿角の雑銭から純白の寛永銭が出たことがあるが、単に未使用状態に近かっただけのようで、数年で真っ黒に変わった。外見が黒く見える密鋳銭は、出来立ての段階では、真っ白だったわけだ。実際、白銅銭は次第に黒くなるものがほとんどだ。

 最近の品は、ほぼ意図的に配合されていると見られる。

 概ねタングステン合金だと思うが、大陸の手法だから、「彼の地で日本の古銭が贋作されている」傍証のひとつではないかと思う。

 タングステン合金は作るのが簡単なので、型取りの練習になる。

 成分分析をすればはっきりするが、この分析は安価ではない。偽物を偽物だとする証拠を得るために、大枚の金を払う必要はなく、「一定期間、机の上に放置する」だけで済む。

 

 ちなみに、創作銭だからと言って安く出すと、ネットオークションで「1円釣り」の素材になると思う。画像への思い込みで値が上がる。よって、それなりの値段、すなわち売られていた時の半値くらいの設定にする予定だ。製作を勉強しようと思う者にとっては、全然高くない筈だ。

 

注記)いつも通り記憶のみで書いており、一発殴り書き。推敲も校正もしない。よって不首尾はあると思うので念の為。「見れば分かる」画像を添付してある。