日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第1K57夜 「入管での手続き」から

◎夢の話 第1K57夜 「入管での手続き」から

 八月二日の午前二時半に観た夢です。

 

 我に返ると、俺は空港の入管の中にいた。

 これからどこか外国に出かけるらしい。

 窓口の前は割と空いていたから、すぐに俺の番が来た。

 管理官が書類とパスポートに目を通す。

 

 「滞在国のヴィザがぎりぎりだが、大丈夫ですか?」

 旅行は一年前に企図したのだが、コロナで順延になっていた。ヴィザはその時のままだった。

 「ひとまず有効期限内で収まる筈ですが」

 管理官が視線を上げる。

 「でも期限が切れるのは、帰国予定日の二日後だよ。あの国は決まりに煩くて、一日でも超過すれば、摘発される畏れがあるよ。罰金は百万円を超える。そういうのがあの国の手口だけどね」

 うーん。民族の血というか、諸事に渡り狡猾で卑怯なところがある。

 だが、今さら日程を変えて、ヴィザを取り直すことは出来ない。

 観光に行くわけではなく、どうしても行かねばならぬ所用が出来たから行くのだ。

 「一応、二日の猶予があります」

 「だが、今や国際関係がここ数十年で最も怪しい情勢だ。飛行機が飛ばぬことも多々ある。二日の遅延なら、充分に起こり得る話だぞ」

 確かにそれもあり得る。しかし・・・。

 

 ここで俺は今起きている事態に気が付いた。

 「これは夢だな。俺は今、夢を観ているのだ。何時までに何をやらねばならないという思いが俺にこの夢を見せて居る」

 

 ここで、背後から「くくく」という含み笑いが漏れた。

 「ばれたか」

 後ろを振り向くと、そこに俺のよく知る者が立っていた。

 「苦境に立てば、いずれお前は俺に願い事をすると思ってな」

 最近、姿が見えぬと思ったが、コイツだったか。

 「お前。帰って来てたのか」

 「ああ。仕掛けが終わったからな」

 「ということは、ついに始めるのか」

 「うむ。これからが本番だ。地上に俺の仕込んだ種が雨となって降り注ぐ」

 ついにあの「十月」が来るのか。予告されていた通りの展開だ。

 頭の中で考えただけだったが、相手は俺のその言葉に答えた。

 「そういうこと。お前の望みも叶えてやる」

 「え」

 息が止まる。俺はコソ泥たちが「報いを受ければよい」とは思ったが、祈願はしていない。

 この場合の祈願は「呪い」と同じことだ。

 「お前は仲間なのだから、頼まれなくとも果たしてやるさ」

 不味い。誰かの「孫」が障りを受けるということだ。あの世のもたらす「報い」とはそういうものだ。

 「案じるな。呪詛にかけてはいないのだから、誰も気付かない。祈祷師や霊能者の類を頼んでも分かりはしない。念を使っていないのだからな。総ては本人が為した因果の報いが孫子に及ぶということ」

 「でも、結局、お前がやることだろ。その上、俺にそのツケを押し付ける。何事もタダではないからな」

 そいつは再び「くく」と笑った。

 「ま、気にするな。少しだけだ。お前にはちょっと働いて貰うだけでよい」

 「ちょっとってどれくらいだよ。千年か?それとも」

 「この世の時間は、あの世では意味がないだろ。気にするな」

 俺と話している間に、そいつの背はみりみりと伸び、二㍍を超えた。

 「ああ居心地が良い。やはり故郷はいいもんだ」

 

 そいつが俺に向き直る。

 「ではこれからお前に教えてやろう。これから何が起きるのかをな」

 俺は慌てて首を振った。

 「いらんいらん。こないだも他言出来ぬ話を聞いたから腹が膨れた。もし他の者に教えたら障りが俺に来るのだろう」

 「ふふ」

 そいつは含み笑いを漏らし、俺の顔を覗き込むように観た。

 ここで覚醒。

 

 体が「氷のように冷たくなる」という表現があるが、まさにその状態だった。エアコンを止めて眠り込んでいたが、まるで業務用冷蔵庫の中にいたような冷たさだ。

 「罰が当たればよい」と思う者は多々いるが、そいつの子や孫に報いを与えるのでは、寝覚めが悪い。

 せめて当人の腹に末期ガンを作るくらいにしてくれ。

 それくらいの優しい報いでよい。

 

 「そいつ」は想像や妄想の産物ではなく、実在する者だから、本当の名を記してはならないようだ。

 「祟りの雨」の本番はこれからだが、人を選んで起きるから、それとは分かりにくい。

 いざ始まってしまえば、あらゆるお祓いが効かない。

 もちろん、「総ては夢の話」だと、最後に付け加えて置く。