◎夢の話 第1K89夜 バイクで
自分自身の本心を観察するために、夢の記録を残すことにしている。幸いなことに、私は起床の直前に見る夢をほぼ完璧に記憶したままで目覚める。
これは二十四日の午前二時に観た夢だ。
バイクに乗って、郷里に向かおうとしている。
となると、俺はまだ二十台の半ば。向かう先は高速の入り口で、たぶん浦和インターだ。
長距離をかけるので、インターに入る前にスタンドに寄りガソリンを入れることにした。
セルフで六リッターほど入れると、スタンドの店員が俺を見ていた。
その店員がそれとなく近づき、俺に言う。
「今日はインターの手前で検問をやってるよ。大丈夫?」
え。大丈夫って、何が?
問い返す前に、店員が俺の頭を顎で指す。
ここではっと気が付いた。
「俺って、メットしてねえじゃねーか」
これでここまで乗って来てたのか。
それなら、早いとこメットを被らないと。
だが、バイクの後ろにはメットを取り付けていなかった。
どうやら、俺は最初からメットなしで乗って来たらしい。
前の道をワンワンとパトカーが通る。どうやら検問で何かあったらしい。
騒動でも起きたのか、五六台のパトカーが走って行く。
これでは、到底先には進めない。
「仕方ない。どこかでメットを調達するか」
幹線道路を避け、市街地に入れば、バイク屋かもしくは自転車屋があるだろ。
自転車用のメットではやはり違反なのだが、パッと見てwそれとは気付き難いものもある。
俺はバイクを押して、スタンドを出た。
しばらくバイクを押し乍ら進んだが、商店街はまだ先だった。
そこで、道の脇にあった小公園にバイクを停め、俺は自分一人で町まで行くことにした。
程なく自転車屋が見付かった。
何だか中学生の時の同級生女子の家の構えに似ている。その子の家が自転車屋で、俺はパンクをする度にそこに自転車を持ち込んで直して貰った。
俺んちは商店で、山家から働きに来ていた娘がいたが、俺がパンク修理を自転車屋に頼んでいるのを知ると、その娘は「それくらい自分で直しなさいよ」と叱咤した。
自分でやっても一時間もかからない。費用だって数百円で済む。店に頼めば千円取られるでしょ。
そんな理屈で、正論だ。自転車屋に頼むのは、ただ「面倒臭いから」というだけ。
「五百円千円の話だから、別に構わんだろ」と思ったりもするが、その調子で他人任せにしているうちに、気が付いてみると、自分では何も出来なくなっていたりする。
俺は田舎者なのに、実は田舎のことなど何も知らず、一人では何も出来なかったりする。
正直、「都会の子は何ひとつ自分では出来ない」と思うのだが、俺だって「出来るふりをしているだけ」だった。
(今はさらに進んで、「出来るふりが出来るだけまだまし」だと思う。)
ショーウインドウを眺めながら、ボケッとそんなことを考えた。
「そんな場合じゃねえや。まずはメットを買わねば」
見えていたのは、中学生用の白異メットだったが、五千円なら安く済む。
すぐ隣に道具屋があるから、そこでペンキのスプレー缶を買い、色を塗ってしまえば分からんだろ。
見せの入口の方に向かうと、扉に紙が貼ってあった。
「本日臨時休業」
おいおい。どうしてくれちゃってるの。
また先に進まないと。
自転車屋があるんだから、きっとバイク屋とかリサイクルだってあるだろ。
今晩中に郷里に帰り、明日の朝には父母と朝ご飯を食べるつもりだから、早いとこ出発しないとね。
ここで覚醒。
男の観る「バイク」の夢は、異性すなわち「女」がかたちを変えたものだ。
過去を振り返ると、確かに思い当たるふしがある。
詳細は書けんが、なるほどと納得した。