日刊早坂ノボル新聞

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◎病棟日誌 悲喜交々 「明日は我が身」

病棟日誌 悲喜交々 「明日は我が身」

 数日前の夜のテレビ番組で懐メロ特集らしきものをやっていた。台所に立っていたので、番組事態を観てはいないが、音は聞こえる。

 「ゲラゲラゲラ・・・」

 おお明菜さんだな。年を取ってからは声が出なくなったが、若い頃は細身全体を震わせて声を出していた。今は五十五は過ぎている筈だが、どうしてんだろう?

 歌がサビに差し掛かる。

 「なあんてね」

 すると、反射的に合いの手を叫んでいた。

 「ハア、どっこい」

 居間に居た家人と息子がカウンターの方を振り返る。

 「どうしたの?お父さん。叫んだりして」

 すぐに言い訳。

 「いいや。この曲はこうするのが決まりなんだよ」

 夜のクラブ活動に行けば、この瞬間、店のホステスが全員で「どっこい」を叫んだ。

 「これが昭和なんだよ」

 絶対に、平成や令和よりも、昭和に生きた者の方が幸せだったよな。

 

 さて、本題は病棟の話。

 火曜は朝一番で眼科だから、腎臓の病棟に入るのが十時過ぎになった。

 「また今日はこの病棟を出る最後の患者だなあ」と呟くと、看護師が「そうですね」と答えた。

 三時を過ぎ、ま、四時頃かな。

 ビデオの機械の調子が悪く、時間を潰すのに腐心させられる。

 ま、MLBで半分はナントカ。

 「大谷、三十五号」を観ていると、向かいの患者が「ゲッホゲホ」と咳を始めた。

 七十台半ばの患者だが、これが繰り返し、繰り返しゲホゲホ。

 調子悪いんだな。ま、調子が悪いからここにいるのだが。

 何気なく、向かいに眼を遣ると、その患者が咳の合間に、自分の手を顔の前に上げて、じっと掌を見ている。

 「あ、あれはダメなヤツだ」

 誰か診てやれよ。かなり具合が悪い筈だぞ。

 

 すると定時の血圧測定で異常が見つかり、すぐに医師が飛んで来た。

 そのパターンは、「血圧の異常低下」で、たぶん、上が六十とか七十に下がっている。

 すぐに心電図を取ったが、「悪い方の不整脈」が出ている。悪い方の不整脈とは「致死性の不整脈」のことでパターンが決まっている。

 医師や看護師数人が大慌てで手配し、循環器の専門病院に救急搬送されることになった。

 すぐ一キロ先にそれがあるが、そこは当方の掛かり付けの病院でもある。

 この病院には心臓外科の担当医がいないので、処置が必要な時には、そっちの病院に搬送して対応してもらう。ま、この病院は医療の殆どを非常勤医で回しているので、「主治医」がいないし、責任を取る者が誰かもよく分からない。

 当人は今の事態がよく分かっていないだが、看護師が「あっちの病院で、たぶん、カテーテル治療を受けることになる」と説明していた。となると心筋梗塞で、既に血圧低下が始まっているから、一分一秒を争う。「ご家族には連絡をしてあり、先方の病院にいらしてます」との由。

 かなりヤバいぞ。

 もっとヤバのは、当方が最初に見た光景だ。

 その患者は「自分自身の手をじっと見ていた」が、これは典型的な「死にゆく者がする振る舞い」のひとつだ。

 死が近くなると、まばゆい光や亡くなった親族の姿を見たり、じいっと自分の手を眺めたりする。

 

 良かれ悪しかれ、あの患者はもうこの病棟には戻って来ない。よい方なら入院病棟に行くし、その後は、たぶん、介護が必要になっているからそういう体制の整った病院に移る。悪い方は、当然火葬場だ。で、後者の方が多い。

 この病棟に来た時点で、それくらいのことは覚悟しているから、当人も家族も承知しているし、看護師や医師にとっても「日常のひとコマ」になっている。

 生き方は人それぞれだが、死に方も同じで、三四日の間夜昼なく泣き叫んで行く者もいれば、周りが気付かぬうちに反応がなくなっている者もいる。

 いずれにせよ、明日は我が身で、特別なことではない。

 救急隊が去った後で、「父さんは障害者だから、ある程度いつ何があっても不思議ではないと覚悟して置け」と息子にメールを打った。家人や娘があれこれ知れば、ただ心配するだけなので、当方の病状について話したことはないが、うろたえずに対処するものが一人必要だ。

 当方の夢の中では、息子はいつも三歳五歳の姿で出て来るのだが、現実の息子は既に二十台半ばだ。

 

 帰宅すると、家人が学校を早退して家に帰っていた。既に授業が無く、あと数日で夏休みですることがないそうだ。

 前の学校の教師と連絡を取ったが、悪ガキの親分のコーセイ君が家人への「お別れの手紙」を出しそびれたので、今の担任が「こう書いていた」と報せてくれたのだそうだ。

 コーセイ君は「先生(家人)が学校を替わったので、ボクは寂しいです」と紙に書いていた。

 担任は、あの「名うての悪ガキ」がこんなことを感じていたと驚き、校長に報告したそうだ。

 家人自身、小中と悪ガキ軍団のボスで、男子女子を従えていた。高校のクラス編成は成績順で、一組から番号が下るにつれ成績が悪くなるが、家人はいつも最後尾のクラスだったらしい。だが、試験をクリアするのは上手くて、普通に大学にも行ったし資格も取った。

 ダンナは「これこそ悪ガキは悪ガキを知るだな」と思った。

 最大の理解者である家人が居なくなったので、コーセイ君たちは、元の悪ガキに戻ったそうだ。

 早速、新しい英会話講師に「このババア」と叫んでいるらしい。

 中学校や高校で、きっと窓ガラスを割って回ると思う。

 イケイケ。やれやれ。盗んだバイクで走り出せ。

 本音で生きろ。

 

 「子育て支援」を標榜しつつ、「扶養者控除を廃止」するという「異次元の少子化対策」を謳うような「姑息」もしくは「イカサマ」な政治家みたいになるなよな。

 総理大臣が「姑息」なのは、机の上だけで生きて来た高級官僚が作った作文を鵜呑みにするところから来ている。(ま、この人の人生総てが姑息だと思うが。)

 「骨太の」「異次元の」とかいう言い回しは、いかにも有名校を出て東大に行ったヤツが考えそうなフレーズだ。「骨太のヤツ」が、自分の振る舞いを「骨太」だと飾るかよ。バカ丸出し。恥ずかしいレベルだ。

 ちなみに、岸田のやっていることは結局、全部が「増税」だ。

 コーセイ君たちが大人になったら、今の官僚や政治家みたいなイカサマや人種のケツを蹴り飛ばして欲しいもんだ。何時までも、かしこまっていると思うなよ。

 未来は悪ガキたちのためにある。

 

 とりあえず、NHKを焼き討ちしよう。数人で行けば犯罪だが、三千人で行けば抗議活動だ。日本人は大人しくて、ほとんど実力行使しないが、暴動を起こして初めて体制が替わることもある。
 NHKは送り付け詐欺だと思う。

 

 えらく脱線した。またも、ひとの生き死にを間近で見たことも少し影響したか。