日刊早坂ノボル新聞

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◎夏の恐怖体験 「白河カーナビ事件」

夏の恐怖体験 「白河カーナビ事件」
 夏は怪談の季節だが、本物の幽霊は冬に較べ夏の方が少ない。これは湿度とか光の影響だが、出難い季節なのに「それでも出る」のは「よほど強烈なヤツ」と言うことだ。
 物事にあまり動じない私だが、この季節に肝を冷やしたのは、やはり白河での最初の経験だ。

 今から二十年くらい前のこと。

 家人が里帰りすることになり、成田まで送って行った。
 その後、郷里に子どもたちを連れて行き、夏の間、子どもたちを預かって貰うことにした。
 ジジババは大喜び。私は一人だけ高速を南下した。

 夜中の十二時頃に、白河に差し掛かったのだが、カーナビが突然、「インター出口を降りる」ように指示した。
 この位置はナビの推奨路でも、距離優先路でも、高速で行く指示しか出さないことになっているのだが、しかし「出ろ」だ。

 たまたま夕食を食べておらず、サービスエリア内の食事には飽きていたので、高速の外に出てラーメンでも食べることにした。

 ナビ通りに進むと、白河の街の中に入って行く。
 ところがさすが地方都市で、深夜になると営業している飯屋が無い。「ラーメン屋なら」と思ったが、それも見つからなかった。
 思案しつつ、国道四号を目指した。バイパスにはよくラーメン屋が多い。ラーメン屋なら地方でも深夜までやっているところがある。
 国道に出るには「東京方面」にナビを設定すればよい。

 ところが、ナビ通りに進むと、白河市内をぐるぐる回る。
 繁華街の細い路地を通り、右折→右折→右折と進む。誰でも分かるだろうが、右折だけを繰り返せば概ね元の位置に戻る。
 同じ角を三度回り、さすがに「おかしい」気付いた。まともな指示が出来ていない。
 「こんなことなら、サービスエリアで何か食った方がましだ」
 そこで白河のインターチェンジを目的地に指定し直して、ナビを発動した。

 すると、街の中心から出たのは良いのだが、どんどん東に向かっていく。東は太平洋側で、国道四号や高速とはまったく逆の方向だ。
 だが、福島から栃木へ一般道を走る者なら知っている筈だが、途中で割と寂しい山道を通る。山を越えると、案外すぐに街に出たりするから、「こっちに近道があるのか」と思ったりもした。

 ところが、車はどんどん山の中に誘導され、道が片側二車線から一車線道路になり、六メートル道路になった。そして道幅がどんどん狭くなって行く。
 気が付いたら街灯さえ見当たらぬ林道だった。
 「この先は何もなく、きっと行き止まりだ」と確信した。
 ところが、ナビはそのルートをそのまま進むように指示している。
 画面では、既に道の表示がなくなり、私道の点線さえも無くなった。
 道はいよいよ細くなり、両側から草が生い茂り、道に被さるようになった。
 路側に猶予がなくなり、Uターンすら出来ぬ状態なので、「道が交差するところまで出たら引き返そう」と思った。
 ところが、全然そんな場所はない。一本道で、既に砂利道に入っている。

 最後は急坂を上ったが、そこでカーナビが指示していた誘導路の青い線がパッと消えた。
 カーナビの画面には、周囲数キロに何もなく、ただ自分の車の位置を示す矢印だけがポツンと光っていた。山の中にいるのは、私の車だけ。

 他人に話す時には、「気が付いたら、目の前が墓地だった」と怪談のオチのように言うのだが、そこは脚色だ。墓地は少し手前のところにあった。
 本当はもっと恐ろしくて、進行方向にはすでに道が無く(行き止まり)、正確に言うとその先が崖だった。
 そのまま進んだら、その崖から落ちてお陀仏だ。
 「こりゃ誘導されている」と確信したので、すぐにバックした。私はこういう時に割と冷静な性質なので、道を踏み外さずにそのまま二キロくらい戻った。ようやく三叉路があり、そこで車の方向を変え、一目散に西に向かった。
 カーナビが「操られている」ことが分かったので、そこからはナビを使わず、道路標識だけを見て宇都宮方面を目指して進んだ。

 ホラー話と違い、現実のそれでは、「何かが立って待っていた」みたいな展開にはならなかった。
 車の前に立つ幽霊を目視したりはしなかったのだが、その一方で「これは絶対に機械の誤作動でない」という確信もあった。
 ま、その後、十日の間に二度追突されたりしたから、神社でお祓いを受けたりもした。

 この時にはお祓いで異変が鎮まったのだが、他力によるお祓いは一時的な効果しかないようで、後にこの手のことが再発した。よって、その後は除霊浄霊の方法を学び、自分で行うようになった。

 その後、何年間も白河には立ち寄らなかったが、これは最初の体験がよほど怖ろしかったことによる。
 七八年が経ち、「そろそろ良いかな」と思い、福島県内を一般道で南下したが、白河付近でまた同じことが起きた。
 ナビの誘導が市内をひたすらぐるぐると回らせる。
 さすがに途中で「また同じことが起きる」と思い、ナビを切って急いで高速に向かった。

 最近、何となく分かるが、こういうのはこの地(白河)が原因で、私がその障りを受けたのではなく、私が「行った先々で幽霊を拾う」から起きるのだと思う。

 説明のつかぬ体験があまりにも多いので、霊能者に見て貰ったことがあるが、その人は「そもそも霊に干渉されやすい性質の人」だと指摘した。(「神霊体」と言うらしい。)

 「障りを避けるためには、若いうちから修行の道に入る必要があった」とも。

 正直、「今さらそんなことを言われても」と思った。(結局は、その後、自分なりに修行させられている。)


 最初の白河の件では、家人を成田まで送った時点で、既に何かが車に乗っていたと思う。訪問先の白河で何かに出会ったのではなく、私が連れて歩いていたのだ。

 たぶん、白河に入る時には、そいつは後部座席に乗っていた。

 数年前に直接、「後ろに座る人影」を見て、初めてこの状況を理解した。目の前に異変が現れているのではなく、居るのはすぐ後ろだった。

 地元の人に迷惑が掛からぬように、恐怖体験をした場所については、匿名にすることが多かったのだが、そんな必要はなかったわけだ。原因は私の方だ。このため、今ではこの体験をした地の「白河」をきちんと記すことが出来る。

 地名を記したところで、そこに住む人たちに迷惑は掛からない。

 現実に自分の身の上に起きるまでは、「ただの話(概ね作り話)」だと思っていたのだが、実際にはもっと酷いこと、怖ろしいことも普通に起きる。ただ、人を選んで起きる面があり、あの世と接点の薄い人にはほとんど何も起きない。起きてもそれと気付かない。

 「カーナビぐるぐる」は割と頻繁に起き、家人と一緒の時にも「東京」と設定しているのに、名古屋方面を指されたことがある。箱根に行った時だが、カーナビの指示で林道に迷い込んで、家人も初めて「ダンナの話が作り話ではない」ことを知ったようだ。

 周りの空気さえ瞬時に一変し、普通の景色ではなくなる。何故か霧やもやが出る。

 

 添付画像は今年の春のもの。

 よく見ると、周り中に不自然な影がある。

 もっと鮮明に腕や顔が映ることの方が多い。