◎病棟日誌 悲喜交々 7/20 「トマト会議」
木曜は通院日。
治療が終わり、食堂に行くと、当方はやはりほぼ最後の方の患者だった。
最近、執筆活動を再開し、夜から朝にかけては原稿を書いているので、通院に出るのが遅くなる。
九時を過ぎてから病院に着くので、駐車スペースを探すのにも苦労する。空きが殆ど無い。
多くの患者が七時頃には待合に来ており、二時間遅れだとほぼ最後の患者に近くなる。
オバサン患者が席に着いたばかりのようだったが、給食トレイを開けて、声を上げた。
「あ、トマトが出てる」
当方も自分のトレイの蓋を開けると、トマトの薄切りが二枚あった。
「病棟の食事でトマトが出るのは初めてだわ。大丈夫かしら」
オバサンが心配するのも当たり前だ。
トマト、バナナ、西瓜は「カリウム三羽烏」で、やたらカリウムの含有量が多い。腎不全患者は、カリウムを排出できないので、あっという間に心不全に直結する。
トマトと西瓜を何切れか食べて、救急車で運ばれた患者の話は幾例もある。
昔は若者が突然死する症例があり、「ぽっくり病」などと呼ばれたが、これも多くはカリウム障害だ。
患者の多くは大学や高校の運動部で、かなりハードな運動量をこなしていた。
運動をし過ぎると腎不全になったりするが、尿は普通に出るが、ろ過機能が働かず、カリウムやリンが体内に残る。
その時に、「疲労回復のため」と果物やジュースを大量摂取すると、カリウム障害が発動する。心不全から心停止に。
トマト一個に西瓜一切れで、心不全を起こした患者もいるから、カリウムはさすが劇物中の劇物だ。
「でも、栄養士がこれでと出しているのだから、大丈夫よね」
オバサン患者は自分なりに納得して、食事を摂った。
そのトマトを観察すると、煮てそれ用のソースをかけてあった。茹でるとカリウムは水に溶け、総量を減らせるので、野菜などは必ず茹でる。
タネの部分も残っていたから、茹でる時には「丸のまま」で、配膳の時にカットした。
当方はむしろ、調理法のほうが気になった。
今は夏向けに怪談を整理しているが、何本かを複数の媒体に送ることにした。
割合、へたれずに書けるようなので、体を慣らし、徐々に侍の方に復帰するつもり。
今後、SNSやブログは退潮局面に入る。
やはり、盛岡藩の贋金つくりの件を必ず小説にしないと。
これは当方にしか出来ない。