◎夢の話 第1107夜 再生
十四日の午前二時に観た夢です。
「着きましたね」と男が言う。
目の前には高層ビルが建っており、この日は三人でこのビルの十※買いを視察に来た。
俺は行政対応と意思決定のコンサルで、他は建設関係だ。
アリマさんと※※さん(失念)の依頼で、今は休眠しているフロアを多目的に使えるように収ゼ円する。
頭の中では「何だか昔の本業に近い話だな。だが俺は体を壊して会社を閉めた。今はもう晩年だし働けるのか」と思った。
だが、その疑問は一瞬で溶けて消えた。玄関尾ガラス窓に写った俺は、まだ三十台後半だった。
そのことで、俺は「自分が夢の中にいる」と悟った。
これは現実ではない。だが、ただの夢でもなさそうだ。
霊夢には霊夢の決まったパターンがあり、潜在意識なのか他の誰かなのかが分からぬが、情報や意思を送って来る。それにはそれなりの手続きがあるのだ。
「ここは俺が二十台の頃に働いていた研究所のビルに似てる」
このビルとは違い、七階くらいまでしかなかったが、下三階が神社だってところはそっくりだ。
俺の勤務先は五階か六階だったが、夜中に一人で作業していると、何だかあちこちに変な気配があった。夜中の一時二時ならこのビルの中にいるのは俺一人だけだが、難か気配がする。
ま、下が神社で、いわゆる「パワースポット」だった、ということに関係している。
フロアに上がると、かなり広く、三百人は収容できそうなホールがあった。
「ここは会議場とかパーティで使える広さだよね」
「祭壇を作って礼拝所でも良い。宗教団体が使える」
だが、そのホール以外はかなり古びていた。
「まるで古民家の中だな。こりゃ」
「かなり直さなきゃならんよね」
あちこち見て回る。灯りがつくから、アリマさんらはずっと基本料金を払い続けて来たわけだ。
ここで急にガタガタと音がして、人が入って来た。
来たのは警官二人だった。
「ちょっと、あなたたちは誰ですか」
「コンサル会社の者です。このフロアを調べに来ました。何ですか?」
「いや。誰もいない階から物音が聞こえるという通報がありましたので、捜査に来ました」
「別に泥棒じゃありませんよ。ちゃんと鍵を預かって来てますからね」
鍵を俺が持っていたので、それを警官に見せた。
「そうでしたか。では無人で何年も放置して来た部屋ですから、足元に気を付けてください」
警官二人はすごすごと帰って行った。
「隣近所の物音に聞き耳を立てる住民がここにもいるらしいね」
「なら使い道をよく考える必要がありそうだね」
「清掃と設備の点検に二か月。内装の直しに二か月。そこからが本番だね」
その通りだが、少し都合の悪いところがある。
「その頃には、俺は地方行脚の旅に出なくてはならないから、少し難しいね」
「地方行脚って?」
「山の中の幼稚園を回って、救世主を探すんだよ」
「え。救世主だって」と一人が含み笑いを零す。
「言い回しはあまり適切ではないけどね。それにまだ十五年以上、その子はごく普通の子だ。俺たちが見つけて教育する」
「俺たち?」
「俺や俺に共感する者たちだよ。どうやら今日ここに来たのは別の意味があるようだ」
俺は普通の人が見えぬ光や煙が見える。
このフロアのホールでは、その光が走り、煙が沸いていた。
「で、ここにはまず教会を作って、救世主を迎え入れる準備をする。アリマさんや※※さんはそういう意図をもって俺に委託した筈だ」
「私にはその光とやらが見えないけれど、どんな感じのものなの?」
「縦か横のまっすぐな線だったり、光り輝く煙だったりする。煙草の煙が漂うのを見たことがあるでしょ。あれが霧のように濃くて、かつ光っている」
自分で話をしつつ、自分に関わることに気付く。
「なあるほど。巫女さまは、あの光の源から来たのだな。トラはその使いだった」
それなら俺の今生の本当の役割はこれからだ。
俺はまだ死ぬわけにはいかんのか。どうやら「再生しろ」と言われているぞ。
はっと身震いをして、そこで覚醒。
眼が覚めると、「とりあえずあと十一人の仲間を探そう」と思った(w)。
ビルの中までは示唆があったが、終盤は普通の夢に。