◎夢の話 第1138夜 葬式
四日の午前4時に観た夢です。
誰かの葬式のために郷里に帰ることになった。
外せぬ所用があったので、到着が一時間ほど遅れたが、皆の宿泊場所のホテルに着いた。
ロビーには親族親戚が礼服を着て集まっていた。
ここから車に分乗し、葬儀会場に向かう。
「じゃあ、※※さん(私)が運転して。この車は運転し難いから」
たぶん、葬儀屋の誰かに鍵を渡される。
車を見ると、大きな外車で、確かに運転し難い。後ろに8人乗れるが、国産車より縦横に30%くらい広かった。
「運転し難いのは俺も同じだが」
ま、親戚の中では、俺は若手の方だし、いつもそういう厄をやっているから、不満はない。
「じゃあ、私たちは※※ちゃんのに乗せて貰うよ」
叔母二人が先に後部座席に乗り込む。
すると、叔母たちの後ろに、母が立っていた。
「あ、来られたのか。あまり無理しないでくれよ」
この年、母は体調がすぐれず、家と病院を行き来していた。
病人でも葬式に来るのだから、亡くなったのはよほど大切な人ということだ。
母は右後ろの席に座って貰った。
さすが左ハンドルで、運転感覚がだいぶ違う。
左折はまだ分かるが、右折になると、うっかり対向車線に入りそうになる。
俺はとにかく運転に集中するようにした。
十五分ほど運転すると、郊外に出た。
家並みが途切れ、田園が拡がる。
葬儀場は丘の上にあるから、湖を回って坂を上ればじきに着く。
後で叔母たちが話をしていた。
「ケイコ伯母ちゃんは、この※※湖が好きで、幾度もここに来たと言ってたね」
ケイコは母の名前だ。
自分の話が出たが、母は特に返事をせず、景色を見ていた。
その湖の近くに差し掛かった。
すると、母が「ここに車を停めて。少し見て行くから。お前も少し休みなさい」と言う。
「分かった」
幹線道路を降り、湖に向かう小道に入った。道が細くなり、いっそう気を遣う。
叔母の一人が「トイレに行くの?」と訊ねる。
湖の駐車場には、公共トイレがある。
駐車場にはすぐに着いた。
俺は先に降りて、後ろのドアを引き、母を下ろした。
母の手を引き、支える。
その様子を叔母たちがじっと見ていた。
「何をしてるの?」
「いや、お袋が少し寄りたいというもんですから」
すると、片方の叔母が首を傾げた。
「え。今日はケイコさんのお葬式だよ」
今度は俺の方が首を捻る。
「え。お袋はホテルから一緒に乗って来ましたが」
ここで覚醒。
母は生涯を通じ、息子や孫たちのことを案じていた。
私が長旅の後、すぐに不慣れな外車を運転するのを見て、案じていたようだ。
ここで気が付く。
最近、台所で料理をしていると、隣に人影が立つ。
手を伸ばせば触れられるくらいの間合いだ。
「なるほど。幽霊の割には不快な感じがしない。あれはお袋だったか」
納得したが、ここでさらに気付く。
「亡くなったお袋が俺の傍に現れるのは、要は『迎えに来た』ということだ」
私が死んだ時には、「最初にアンコールワットやマチュピチュに連れて行く」と母に約束した。
そろそろその日が近づいている。