日刊早坂ノボル新聞

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◎病棟日誌 R060606 「医師は勧めない」

病棟日誌 R060606 「医師は勧めない」
 この日は火曜の採決の結果が来た。
 週末は実験をしていたのだが、想定した通りだった。
 腎不全患者が気を付けるのは、カリウムとリンの過剰摂取。
 いずれも水溶性で、摂取量が多ければ、尿で排出されるのだが、腎不全患者はそれが出来ぬので厳しい制限がある。

 カリウムは体に必要な金属だが、摂取量が多いと心不全を引き起こす。サスペンスドラマでは、よく有機カリウムが毒物として用いられる。
 世界保健機構(WHO)が2012年に提案した高血圧予防のために望ましい摂取量は成人で1日に3,510mgとなっている。
 血液の検査では電解質の量を計測するが、カリウムの場合は、基準値が3.5~5.0mEq/L(ミリイクイバレント/L)となっている。もちろん、厳密な境界線ではなく、「この辺」くらいの意味だ。
 腎臓が正常であれば、血中カリウム濃度が高くなれば、尿として排出されるので問題はない。体が「毒」として認識し外に出すという意味で、このため、カリウムには「利尿作用がある」ことになる。

 腎不全患者は尿として排出が難しいから、食事を制限して、摂取量自体を少なめにすることになる。
 ここまでは当たり前の話。
 ところが、前述の通り、カリウムは利尿作用があり、尿を排出すると、電解質カリウムも排出されるから、尿を出し、かつ水分を補給すれば、血中量を下げられる。
 私は腎不全になって7年だが、まだ尿が出るので、幾らか排出が可能だ。
 最近気付いたが、カリウムをソコソコ摂取した時に尿の出る回数が増える。普段は日に1回なのに、生野菜やバナナなど高カリウム食品を摂ると、日に4回5回トイレに行くことがある。利尿作用があるからだが、その時には、尿を排出したことで血中カリム濃度が下がっている。
 それなら、「一定範囲内でカリウムを摂取する」ことで血中カリウムの量を下げられるかもしれぬ。
 もちろん、制限基準値よりも上の話で、問題はその許容域がどれくらいまでかということになる。
 5mEq/Lが基準値なら、そこからどこまでが許されるのか。
 採血が月に2回あるので、その間に何を幾ら食べを記録しながら、結果を見ることにした。
 これまでの経験では、6mEq/Lまでは殆ど影響がない。
 (これは人によって違うので念のため。あくまで私の場合だ。)
 食品レベルで言うと、小皿で生野菜サラダを食べるのを三日間続けると、5.8くらいまで上がる。高カリウム食品のバナナなら、1本で+0.6くらい上がる。
 この辺では利尿作用が出るところまで行かぬので、さらにその先を目指すが、6.3mEq/Lくらいになると、排尿の回数が増えると同時に、血中量が下がることが分かった。
 これなら、幕の内弁当についている生野菜などは食べられる。
 今回は火曜の採血で、土日月の三日間の食事が反映されるが、毎日生野菜サラダ(小皿)を食べ、一度バナナを食べた。
 尿は日に3回から4回だった。
 その値が5.3mEq/Lで、体には影響がない。
 まだ余裕があると思うが、このオペレーションは「ひとつ間違うと即死」なので、慎重に行く必要がある。

 リンの方は、血中濃度が高まると動脈硬化を招く。
 元素レベルではリンだが、物質レベルではコレステロールなどで、一般の人にはこちらの方が馴染みがあると思う。
 これも尿で排出されるわけだが、血中濃度が高まると、脳梗塞心筋梗塞になる。腎臓が正常な人でも、過剰摂取により、これらの病気になる。

 どうやら、リンが吸収される最大の器官が大腸のよう。
 実際、便はリンの塊で、これが大腸に長く留まっていると、リンの吸収率が上がるようだ。
 それなら、「尿を排出する」ことに加えて、「便を長く腸に留めない」ことで、リンの血中量を減らすことが出来るかもしれない。
 こちらで実験しているのは、「便秘の徹底排除」でとにかく整腸を心掛けることだ。腎不全患者はヨーグルトなど整腸作用のある食品を摂ることが出来ないから、薬などに頼らざるを得ない。
 今回、なるべく便を長く大腸に留めないようにする一方、確認ため、ある程度、リン包含食品を摂取してみた。
 高リン食品は、肉類や卵、乳製品などになる。
 ちなみに、牛乳をコップ1杯で、0.7くらいのリン量が上がる。 
 肉は殆ど食べぬのだが、今回はハンバーグを食べ、ヨーグルトを1杯飲んでみた。
 これまでの経験では、概ね6.2mEq/Lくらいに上がったのだが、今回は3.9で、正常の範囲だった。

 それなら、「ソコソコ尿を出し、便を溜めぬ生活をする」ことで、リスクが下がるということだ。
 一方、そのカリウム・リン排出のためには、カリウムを摂取する必要があり、これにはもちろん、リスクがある。
 ひとつ間違えば死ぬので、加減を誤ってはならない。目安は「自分の体」で、数値的基準はない。ひとの体はそれぞれ違う。

 身体の機能は、使わぬとどんどん衰えるから、腎不全患者は腎臓の保護のために、逆に腎臓が萎縮し、機能が低下する。
 腎臓の機能は尿を作るだけでなくホルモンを作っているので、機能が完全に停止すると三日もたないらしい。
 そうなると、少しずつ刺激をして、腎臓の目を覚まさせることも必要な手立てだと思う。
 平均台(もしくは綱の上)を歩く行為で、医師は絶対に勧めない。落ちれば即死。

 ちなみに、亜鉛マグネシウムは、医師にサプリを処方されている。これを摂取すると、男性は「朝に体の一部がもやっとする」と思う。「元気でいたいなら牡蠣を食え」は本当らしい。
 食事制限により銅が足りなくなるらしく、周り回ってカルシウムも不足するようになるらしい。動脈硬化に加えて、骨粗しょう症も腎不全患者に必ず起きる病気とのこと。
 ま、中高年になれば身体機能全般が衰えるから、以上の病気は腎不全患者だけでなく誰にでも起きる。

 

 30万人に1人の割合で、「腎不全が治ってしまう」患者がいる。幾つかのルートを辿り実験しているが、もし病状が改善されるのであれば、役に立てると思う。