◎夢の話 第1K41夜 高校の前を通ったら
十三日の午前二時に観た夢です。
たまたま盛岡の上田を訪れた。
連れの家人にあれこれ説明する。
「盛岡城は南部氏が福岡城から移り住んだ城だ。不来方城と呼んだりするが、これは南部が来る前に福田氏がいた頃の話だ。不来方ってのは伝承に基づいていて、この地を荒らす鬼を退治した時に、その鬼に『もうここには来ません』と約束させたことから来ている。実はその不来方の中心は城の方ではなく、この上田だったようだ」
歩いているうちに正面に校門が見えて来た。まだかなり遠い。
「あそこは俺が出た高校だが、昔とはずいぶん変わってしまった」
そりゃそうだ。何十年も経ったもの。
校門の近くまで行くと、何やら周囲が騒がしい。
門の周囲には機動隊の車が沢山停まっていた。それを人垣が取り囲んでいる。
「こりゃ何か事件でもあったのか」
すると、すぐ傍の人たちが噂していた。
「閉校の措置に反対して、抵抗しているらしいよ」
なるほど。少子高齢化が進み、生徒が少なくなったから高校を郊外のひとつ二つに統合するわけだな。
先月あたりにニュースで言っていた。
抵抗運動だと。でも、今時の子どもがそんなことするのか?
中を覗くと、何やら学舎の前に大きな櫓が組んである。
鉄骨を組み、金属の板を張り巡らしてあるから本格的だ。学生運動が盛んだった頃の風景みたい。
警察を含め、皆がそっちを見ているので、俺は家人をその場に残し、するすると前の方に進んだ。
校庭の半ばまで進むと、状況がよく見える。
「何だよ。ジジイばかりじゃねーか」
ハゲ親父たちが、鉄骨櫓に取りついて、何かを叫んでいた。
「閉校反対」「統合をやめろ」
おいおい。いいトシこいて何やってんの?
全員が六十台以上じゃねーか。まったく。
俺は同郷人とか、同窓生みたいな関りでつるむのが嫌いなんだよ。
でも、たて籠っている当人たちはすこぶる本気だった。
鉄パイプを振り回している者もいる。
「ふーん。あれじゃあ、警察だって本気を出すよな」
すると、校門の方から放水車が入場して来た。
BGMはやっぱりダースベイダーのあの曲だ。
「あーあ。ジジイたちじゃあ、ひとたまりもねえぞ」
櫓からバラバラと落ちる禿げ頭の姿が目に見えるようだ。
「はあ」と溜息をつく。
「こんな面白いこと、他にあるか?」
俺は校舎裏に回り、鉄パイプの長いのを拾った。校舎の中を通って玄関に出れば、たぶん、櫓まで行ける。
でも、問題がひとつあるなあ。
俺は躊躇なく機動隊員の頭を潰せるから、その途端にこれが「凶悪事件」に変わってしまうってこった。
ま、後のことなんかは知るか。
ここで覚醒。
夢の中では「あの世」と同じ様に理性のたがが外れる。大脳が働かなくなるという点で共通するものがある。
このため、覚醒時には、他の車が煽り気味の振る舞いをしても「バカヤロ。シネ」と呟くくらいだが、夢の中では斧をもって襲い掛かってしまう。
ま、夢の中だけだから問題はない。
覚醒時なら、感情が行動に至るまでは、途中で理性のチェックが幾つも入る。