日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第1108夜 退去

夢の話 第1108夜 退去
 十八日の午前一時に観た悪夢です。
 たった今目覚めたところで、恐ろしさに手が震えていた。

 ビルの一室で自社を営業していた。
 社員数人と食事をして、事務所に戻ると、室内の調度類が半ば片付けられている。
 「どうなったのか?」 
 すると、そこに男がやって来る。
 「契約期限が来ていますので、一部は片付けさせて貰いました。あとの調度類はなるべく早く撤収してください」

 そう言えば、そんな話もあったっけな。
 ビルが建て替えになるので、「いつ頃までにビルを出て下さい」と言われていたような気もする。
 「随分急ですね。普通は事前に幾度か通知がある筈ですが」
 すると男が答えた。
 「いやいやお知らせは幾度も出していますよ」
 言われてみると、時々、葉書のようなものが来ていたような気もする。
 
 「早くここを出ないと、このビルは倒壊してしまいます。だから最低限の品を運び出して、ここから退去してください」
 ビルが倒れそうなのでは仕方がない。
 「では、すぐに車を回します。パソコンなどは改修させて頂きます」
 俺は自分の家まで戻り、ライトバンで事務所に戻ることにした。とりあえずそれに積める分だけ積んで、あとは捨てて貰おう。

 だが、ここで真実に気付く。
 「俺がビルに事務所を置いていたのはもはやかなり昔の話だ。それに過去にこのビルにいた経験もない。そうなるとこれは夢だ。俺は夢の世界にいるのだ」
 それならこの夢はどういうことだろう?
 「自分が住んでいる建物」は、すなわち、俺の身体のことだ。
 大病をする前に観た夢は、「インド寺院のような自分の家が倒れる」という夢だった。
 病気をする時には、いつも事前にその手の夢を観て来た。
 そうなると、今こんな夢を観るということは・・・。

 「なるほど。もう俺には死期が来ているという報せが来ているということだ」
 そう言えば、このビルの管理人は、かつて俺が会った「お迎え」の一人に似ている。
 二人組の「お迎え」が来た時には、一人は背広にハンチング帽、もう一人はジャンパーを着ていた。まるで不動産屋のようないでたちだった。
 その背広の方によく似ている。
 「それなら、もう俺には車を取りに戻るくらいの時間しか残されてはいない」

 自分の死期を悟ることは、もの凄く怖ろしい。
 これまでは、半ば第三者的に「死ぬかもしれん」「きっともたない」と思うだけだったが、今回は確信に近い。
 目覚めている時の時間なら、あとどれだけなのだろう。
 数か月か、数週間か、あるいは数日か。
 「いずれにせよ、今取り組んでいる終活を早く進めねばならない」
 ここで覚醒。

 目覚めた時には、何とも言えぬ恐ろしさに手が震えていた。
 改めて「今、自分にはまたお迎えが来ているのだ」と思った。
 これまでにも危機は幾度かあったが、その都度、あの世対策で切り抜けて来た。
 「お迎え」に直接会った時も、稲荷の障りを経験した時もそれで乗り切った。
 最近も「冥界の圧力」を感じ続けている。何とも言えぬ力が働き、自分を死線に誘っている。
 それなら、これからは「終活」と「お迎え回避」の両面作戦を展開する必要がある。

 自分自身の「死期」などは事前に知るべきものではない。
 今も恐怖で手が震える。

 

追記)死ぬと「脳を失う」ことが原因で、思考能力が無くなる。感情だけの存在になるわけだが、私は一生を通じ多分に情動的だったので、たぶん、悪霊になるような気がする。
 死んでいる者を食い取り、生きている者にとり憑くような悪霊だ。
 せめて「死期の迫ったものをあの世に誘う」立場に留まって欲しいと思うが、既に心は「亡者の群れ」の中に取り込まれている。
 「自分自身が禍々しい存在になる」ことが何よりも怖ろしい。
 私のこう言う感覚は、けして想像や妄想ではないことを知っているだけに、なおさら怖ろしいと感じる。

 

 ちなみに、この夢の中には会社の同僚(女性)が「事業パートナー」として登場していたが、この人は今はもう亡くなっていると思う。