◎夢の話 第1118夜 悪夢の理由
十二日の午前二時に目覚めたが、悪夢を観ていたらしく、脂汗だらけだった。
「夢の話」なのに、内容の詳細を憶えていないが、想像はつく。
今は「眠ると必ず悪夢を観る」状態ではなく、「殆ど悪夢を観る」が現状だ。
内容もいつも同じで、「契約期限切れで、立ち退きを迫られる」というものだ。
夢の中では、自分が入居している事務所の話になっているが、この場合の建物は「私自身の肉体」の象徴になっている。繰り返し見ることで、夢の中の「俺」もそのことを理解するようになっている。
要は「とっくの昔に寿命が尽きているのだから、早くその肉体から出てあの世に入れ」という意味だ。
実際、この十年の間は、幾度となく生死の境目を踏んでいる。
「お迎え」に直面したりすることもあった。
ま、今さら自分の死を怖ろしいとは思わぬが、幾らかあと数本ほど「生きた証」を残したい気持ちもある。これは死期の迫った者なら誰しも同じ思いを抱くだろう。
この立ち退き請求が、ひと頃の借金取りなみにしつこい。
こんな手間を掛けずとも、具体的な「お迎え」のかたちで、また私の前に立てば話は済むと思うが、何故そうしないのか。前回、「お迎え」の誘いから免れ得たのは、私に人徳があったわけでも、延長願いが通じたためでもなく、単なる偶然だった。次はあんなしでかしはせぬだろうから、「さてそろそろ行きましょうか」と促せば、それで事足りる。
なら、今の悪夢は何?
少し考慮が必要なのは、何らかの示唆が含まれる場合だ。
それも私だけでなく、他の者も関係しているので、性急な要請になる。
だが、他の人にも関わる事態とは何か?
ひとつ思い出すのは、コロナの始まりの頃のことだ。
令和二年の一月二十七日に神社の神殿前で、ガラスに映る自分自身を撮影すると、左隅に何か制服のようなものを着た男が写った。
この時、私の他には人がいなかったし、神社にこの装束で参拝するものはいない。
はっきりと「これは人だ」と分かるほどの鮮明さなので、見間違いでもない。
だが、この男がどういう者なのかが分からない。
消防署員のようでもあり、宇宙飛行士のようでもあり、何故それが神社に来ているのか。
この謎が解けたのは、一週間ほど後のことだ 。
二月三日に横浜に香港経由のクルーズ船が到着し、即日検疫が始められた。
この時のニュース報道で、防護服の係官が映ったので、ここで初めて、神殿の男が防護服を着ていたことが分かった。
要は、それから始まる「国家規模の感染」を示唆するものだった。
こういうものは、それが起きて初めて「そういう意味だったか」と合点が行く。まだ起きていないことを視野に入れるのは困難な話だから致し方ない。
だが、確実に示唆は来ていた、と言えなくもない。
令和元年頃から、あの世が急に騒がしくなり、それから二年間くらいは、写真を撮る度に幽霊らしき人影が写った。
コロナで亡くなった人の数は、令和二年から五年間での累計で七万五千人弱に上る。
普段の年より急激に死者数が増え、死亡率が年間数ポイントずつ上がったほどだ。
幽霊たちの頻繁な登場は、あの世の変化を反映するものではなかったか。
ところが、今は令和二年よりもあの世が騒がしい。
私の周りには、頻繁に幽霊が寄り憑いて、耳元で何かを囁く。
新しい者たちが私に抱き付くが、まるで何かを伝えようとしているかのよう。
私はそれを「死期を告げる」ものとして解釈しているが、私自身に何かが起きるわけではない。
(一昨年のように、明らかに悪意を持って寄り憑く者もいるから収拾が追いつかぬ面もある。)
もしかすると、令和二年のように、この後、「何かしらの凶事が起きる」ことの予告かもしれん。
これは頭に入れて置くべきだと思う。
もし今のが「これから起きることの告知」なら、令和二年から数年続いた事態よりも、かなり重い事態になるかもしれん。
かつては、チラホラと顔を出す程度だったが、今はしゃにむに私に抱き付いて訴えている。
今年から来年は、多くの予言者が「自然災害」「天変地異」が起きると言っている。
妙に話が一致している面があり、警戒が必要だと思う。
慌てず騒がず、出来得る限りの用意を整える必要がある。リスクを意識して、自分なりに備えることで、幾らかそのリスクが軽減される。
追記)長い間、「自分には死期が迫っているから幽霊が寄り憑きやすいのだ」と思い込んでいたが、どうやら違っていたらしい。
最近になり、「伝えたいことがあるから」「頼みたいことがあるから」促しているのだと気付いた。この辺は言葉で説明はしてくれぬので推測するしか道はない。ま、前から「助けて」という声を頻繁に聞いてはいた。
私は元々鈍感で、昔も今も人心(特に女心)がまったく分からなかったが、相変わらずだった。
そのことに気付くと、その一瞬を境に心身の状態がガラッと変わった。腎不全なので小水は日に一度出るかどうかだったが、今は三度は出る。
「まだ為すべきことがあるのだ」と思うだけで、背筋がピリッと立つ。
今は居間で寝袋に入って眠ることが多いのだが、目覚めた時に最初に眼に入るのが、向かいの窓に置いた額で、それには母の書いた「七転八起」が記してある。