◎「島津亜矢」恐るべし
「歌の上手い歌い手は幾らでもいる」、「ルックスのきれいな人は幾らでもいる」が、「歌が上手くルックスの図抜けた者はなかなかいない」からスタアになれる。
これが常識だ。
実際、フィリピンのクラブに行くと、そこの専属歌手にはとんでもなく上手い歌い手がいるが、スタアにはなかなかなれない。
プロになりスタアになるには、総てを「持っている」必要がある。
だが、これは一般的に言うテレビや映画でのスタアを意味するものだ。ルックスが頭二つ抜けていたり、他とはかけ離れて歌の上手い者は、一芸で自分の価値を証明できる。
島津亜矢さんは、正直な話、「良い意味でブチャイク」だと思うが、歌の上手さは当代一だ。
日頃、病棟で六時間も寝たきりで過ごすので、その時間を潰すのにネットサーフィンを多用する。
たまたま島津さんの動画案内を目にし、「そう言えば、晩年の母がよく聴いていたっけな」と思い出し、聴いてみた。
北島演歌だったが、これがかなり上手い。
「北島三郎の世界をよく表現で来てんなあ」と感心した。
その流れで他の曲を聴いてみた。
「天城越え」「三日月」・・・。
あれあれ。本人に匹敵するくらい巧みだわ。
ここから、カバー曲の方に重点が移る。
島津さんは、ポップス、洋楽も歌うわけなんだな。
巧みだと実感させられるのは、「演歌臭さ」がまったく無いからだ。演歌特有のこぶしと言うか「癖」が消えている。
それなら、「駅」はどうなのよ。
この曲は歌い手の表現力がストレートに反映される。
今の竹内まりやさんの歌う「駅」の主人公は、四十台半ばの女性のように聞こえる。竹内さんは六十台半ばだから、かなり若返っている。
若手の堀優衣ちゃんの歌う「駅」は、二十台後半の女性の歌になっている。これは上手い。若手ではこの子の「駅」が一番響く。
島津さんの「駅」の主人公はアラ四十歳くらい。佇まいが眼に見えるよう。島津さんは五十台ではなかったか。
おいおい。この歌手はただ者ではないぞ。
そこから、島津さんの洋楽カバーを聴いた。
この人の表現力は尋常ではないわ。
冒頭で「良い意味でブチャイク」と失礼なことを書いたが、とんでもない話だった。
こりゃ、病身を押して、いずれ生歌を聴きに行かねばならない。
島津亜矢恐るべし。
母が何故いつもこの人の歌を聴いていたのか、その理由がよく分かった。この人の歌で、母に近づくことが出来た気がする。
ちなみに、母は「〇木〇ろし」さんの歌が嫌いで、この歌手が顔を出すと即座にチャンネルを変えていた。その母を見ていたので、私もつい別のチャンネルに。