日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎覚悟を決める

◎覚悟を決める
 左隣のベッドの女性は70歳くらい。
 血圧が230に上がったかと思えば、急にストンと80に下がったりします。
 熱は常に37度台。
 時々、下血をしているのですが、医師に「内視鏡検査に行ってください」と言われているのに、なかなか行きませんでした。
 家族の気配がしないので、たぶん、独り暮らしのよう。
 ダンナさんに先に逝かれたのではないかと想像しています。

 今の症状が母の最後の半年と同じで、たぶん、腸の癌から肝臓に転移しているのではないか。
 肝臓は痛くならないのですが、熱が出ます。
 下血があるのに、検査や治療を避けるところを見ると、もはや腹を括っているような気がします。
もしそれなら、残りは半年から一年。

 他の患者も似たようなもので、時々、話をする男性患者(60過ぎ)は、「家族だけでなく、他の人のやっかいになっているようで心苦しい」「治る病気ならよいが、悪くなるだけなので、気が滅入る」とこぼしていました。
 当方も「自分独りでトイレに行けなくなったら」、それが治療を拒否するタイミングだろうと思います。
 母は最後の日まで、自分でトイレに立っていました。

 しかし、日本ではモルヒネを打ってくれないので、「覚悟した」後はかなりの苦痛が待っています。
 「治すための治療」ではなく、「苦痛を取る治療」を許可すれば、患者が苦しまずに済みます。

 関西の病院?で、40台の女性透析患者が治療を拒否して亡くなった事件がありましたが、「治療不要の同意書を書いた」のは、家族や社会に「申し訳ない」と自分を責めたから。
 そういう時には、周囲は「励ます」べきで、「同意書があるから」と見殺しにすることではないです。
 カナダあたりでは既に「松葉杖」に近付いているらしく、自分で透析する器具も出来ているとのこと。法的に「障害者」ですらない。
 治療をしないのに麻酔も投与しないのでは、女性患者には酷い苦痛があっただろうと思います。

 病院で観察していると、実態が分かりますが、最後はどの人も「似たり寄ったり」。必ず家族や社会のやっかいになります。
 寝たきりになり、何年もベッド生活を送るのは、それまでさしたる病気をして来なかったケースが多いようです。

 90を越え、寝たきりになったら、「もう良いかな」と思いそうなものですが、そういう状況になればなるほど、「死にたくなくなる」ものらしい。
 父によると、実際、「まだ死にたくない」と叫ぶ寝たきり高齢者は「よくいる」とのこと。

 隣の女性患者は、目の前の苦痛は嫌だが、「半年後」は覚悟している模様です。こういう時は、女性の方が腹が据わるらしく、泰然としています。
 当方はもちろん、歩けるうちはジタバタするつもりです。
 当たり前ですが、「魂を売っても」生き延びるつもりですね。
 と言っても、「残り」は幾らもないわけではあります。