日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎実際に体験したちょっとだけ怖い話  5)後部座席に幽霊がいる

◎実際に体験したちょっとだけ怖い話  5)後部座席に幽霊がいる

 自分自身で体験した怖い話の続きになる。脚色を避け、事実に即した出来事をなるべく平坦に記す。怪談まで行かず、日常の中で起きた「ちょっとした怖い話」程度の内容だ。

 

 初めて「車の後ろに乗られた」のは割と最近で、今から五六年前のことだ。

 N湖で複数の「この世ならぬ者」の影を見たので、頻繁に供養を施していたのだが、一日の内に二度往復したことがある。

 詳細は忘れてしまったが、帰路に何かしら気になることを思い出し、もう一度確認しにN湖に行ったのだ。

 その帰りには、既に夕方になり薄暗くなっていた。

 N方面からH市に向かう交差点を曲がる手前で、何とも言えぬ嫌な感じを覚えた。

 ひとが息をこらしじっとしている時の気配のようなものを感じる。

 そして、左折する時に左後ろを確認するのだが、視界の端に後部座席に黒い影があるのが目に入った。

 この時点ではそれが何か分からない。

 ミラーで後ろを見るのだが、別段、何も変わったものは見えない。

 (鏡に幽霊の類は映りにくい。ここは一般に流布されるものと現実には相違がある。)

 だが、一瞬後にすぐ理由が分かった。

 「※※※だったのに」

 仔細は聴き取れぬが、何かブツブツと話す声が聞こえる。

 それまでは、夕方で薄暮の頃に「黒い影が見えたような気がした」だけなので、まだ心に余裕があったが、声が聞こえるとなると話が別だ。幸い田舎道だったから、すぐに道の端に車を寄せ、窓を開けた。

 「降りるか、あるいはついて来ても良いが、気配を消してくれ。無用に近づくな」

 こういう時のために、座席の脇に鈴を備え付けてあるので「リンリン」とそれを鳴らした。

 数分で落ち着いたが、この程度なら「気のせい」の範囲だと見なしても良い。

 

 二度目はK央道を走行中の時のことだ。

 神奈川で知人と会い、帰路には深夜になった。

 疲労で少しぼおっとしていたが、トンネルを抜けると、例によって後部座席で身じろぎをする気配がある。ミラーを見るがやはり誰もいない。

 ちなみに、夜になると他の車のライトの角度によって、鏡に映ることがあるようだ。ま、ガラス映像のように光を選別しないので、かなりレアだ。

 だが、座席が人の重みで撓む感じや、衣擦れの小さな音が聞こえる。

 高速走行中なので、エンジン音にかき消され、声は殆ど聞こえない。

 「※※※ぬ※※が※※・・・」

 ここで「どこかで幽霊を乗せて来た」という確信に至る。

 

 ここからが本題だ。 

 世の中に「幽霊が車に乗って来て・・・」という類の怪談は数々あるが、大半は「助手席(か後部座席)に座っている」というものだ。

 ところが、この時のそれ(たぶん女)は、運転席にいる私の左後ろで、私の頬の十五㌢後まで顔を寄せていた。横を向けば、たぶん、間近にそいつの顔を見られる。

 言葉では上手く表現出来ぬほどの不快さだ。既に幽霊が寄り付く時の感触を憶えているので、肩口に手が掛かっていることも分かる。

 前に予行演習めいた体験があったから、ハンドルの扱いを間違えたり、急ブレーキを踏んだりせずに済んだが、ひとつ間違えると大事故に至っただろう。

 だが、この時も椅子に括りつけてある鈴を鳴らしているうちに気配が消え、落ち着きを取り戻した。

 怪談めいた展開ならこの先に幾らでも作れるわけだが、現実に起きる「肌寒い体験」は、多くこの辺までで止まる。

 

 ちなみに、「あれは本物だったのだな」と改めて思うのは、この記述を中断してトイレに行き、戻って来てみると、スキャナの撮影スイッチが入っていたことだ。「外付けスキャナのボタンが押されました」のメッセージが出ていたが、私を含めそれを押す「指」がどこにもない。

 入力を再開すると、書体が斜めフォントに置き換わっている。

 あの時のが「気のせい」でも何でもない上に、「今も傍にいる」のではなかろうか。 

 左肩の後ろに顔が寄って来るのは、この時一度きりではない。

 

 さて、「タクシー怪談」などに、運転手が「幽霊を客として乗せてしまう話」が時々ある。

 職業運転手以外では、あまり体験談を聞かぬわけだが、これは運転時間の長さと確率上の問題だろう。

 職業で運転していれば、毎日、長時間運転する。長く運転し、多くの人を乗せていれば、様々な怪異を体験する機会が増える。

 もちろん、後部座席に「何者かが乗っている」ことに気付くという経験は、職業運転手だけではないだろう。

 

 幽霊を見たり聞いたりする経験を重ねると、次第に「恐怖心」が小さくなって来る。

 そこに居ない筈の「何か」が立っているのを見たり、それが画像に残ったりしてしても、現実にはそこから想像するような怖ろしい事態に至らぬためだ。

 動揺して平常心を失ったり、過度に恐怖心を覚え、自ら潰れたりしなければ、必ず解決の糸口が見つかる。

 しかし、この「運転中に気がついたら、肩の後ろに幽霊がいる」という事態にはどうしても慣れぬ。これは、運転する者が両手でハンドルを操作しており、動きが取れぬ無防備な状態だからだろう。

 

追記1つい先月に神奈川方面に行った帰りにも、やはり後ろに乗られた。それはその時点でも記録を残したと思う。

 帰路途中に厚木インターの近くを通ったのだが、「女」が乗ったのはその二つ前くらいの交差点のような気がする。

 この付近でも常時カーナビの誤作動が起きるので、近くを通る時にはナビを止める。

 この文書を作成中に、バタバタと電気製品の誤作動が起きたが、例によって、受話器(回線なし)も「プリ」と鳴った。電圧の変化で、周辺機器が総て誤作動を起こしたのなら、むしろほっとする。

 何せ八か月以上も日高の村社で拾った悪縁に苦しめられたばかり。

 「女」は今も近くにいる可能性があるわけだが、さすがにウンザリする。

 

 かつて霊感師のO先生は私について「神霊体」という呼び方をしたが、世間では同じことを「憑依体質」とも言う。やはり念を使った祈祷に立ち入らねば、統制出来ないのかもしれん。

 しかし、これまで「念」域に立ち入らずに来たのは、それを扱えるようになると、私は疑いなく呪詛を始めると思うからだ。この世には罰を与えたい者が沢山いる。

 

 平坦に出来事を記すようにしているが、この件はすごく気色が悪い。後部座席では「何者か」が髪の毛の匂いまで嗅ぎ取れるような近くにいたが、男の使わぬ香料の匂いなのでそれが「女」だと分かった。トリートメントの銘柄まで当てられそう。

 「後に誰かがいる」と気付いても、さすがに顔を向ける気にはなれない。確認しても、こっちには逃げ場がない。