日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎病棟日誌 R060828 とりあえず姿を隠す

病棟日誌 R060828 とりあえず姿を隠す
 まずは木曜日の分から。
 問診は看護師のユキコさん。
 ユキコさんは右肘の裏側と二の腕の上の方に青タンが出来ていた。
 頭の中で「この位置は不自然だな」と閃く。
 この辺、当方は病的に人間観察をしてしまうし、確かめたくなってしまう。
 そこで冗談気味に訊いた。
 「ユキコさんはそそっかしいか、怒りっぽいかのどっちですか?」
 この場合、「そそっかしい」は「転んだ」、「怒りっぽい」は「ダンナにエルボーを打ち下ろした」と言う意味だ。
 ところが、ユキコさんは「息子とちょっとあって・・・」と答えた。
 27歳の息子がいるが、「そろそろ車の任意保険を自分で払って」と伝えたら、たまたま息子の虫の居所が悪い時で、口論になったらしい。息子がキレて、壁を叩きテーブルを蹴った。
 その時に、たまたま右腕に何かが当って青タンが出来たらしい。
 おいおい。これって笑えねー話じゃねえのか。
 とりあえず、「俺はまた、ダンナさんに肘うちでもしたかと思いましたよ」と混ぜっ返したが、全然とりなしになってねえや。
 気まずい。

 そこで、急遽話を変えて、宝くじの話をした。
 「座敷童の効果でサマージャンボの3等が当りました」
 「えええ。凄いじゃないですか」
 「でもサマージャンボは3等が1万円ポッキリなんですよ」
 で、ユキコさんはまだ結果を見ていないそうで、ここからはようやく「当たったらどうする」の話に。
 よかった。雰囲気が変わる。
 「当たったら、とりあえずすぐに仕事を辞めて、一年くらいはリゾート地でのんびりするのがいいでしょうね」
 「ドバイとか?」
 「ハワイでもどこでも構いませんが、一年いたって何千万かしかかからない。その間にほとぼりを冷ますってことです。すぐにばれるらしいですから」
 本人は言わずとも、やたら投資か寄付の勧誘が来るようになるらしい。ま、口座に憶の金が入れば、銀行員がそれと気付く。
 金を持っている人を紹介すれば、その筋から霊が貰える。
 このルートからしか情報が漏れることはない。
 もちろん、当人の気が大きくなって、自分から漏らす、漏れることもあるかもしれない。

 ここからが木曜日分。
 朝、ユキコさんがベッドに来ると、「九月一杯で退職することになりました」と言う。
 「家庭の事情」らしいが、田舎のお父さんが高齢だから介護に入るのか。それはよくある。
 あるいは家庭に問題があるのか。息子と喧嘩した、と言ってたし。
 「山家育ち」という共通点があるから、気楽に話せたのに、ウエキさんに続きユキコさんまで消えてしまうのか。
 「ちょっとがっかりですね」と応じた。

 十分後、もう一つの可能性もあると気が付いた。
 「さては当たりやがったな」
 これは羨むとか妬むという感情ではない。
 家族の問題で退職するわけではないのなら、心底よりそっちで良かったと思う。
 滅多なことではそんな展開は無いわけだが、もしこっちなら、当方はすぐに宗教法人を設立して「座敷童神社」を作る。
 具体例があるのなら、「ご利益間違いなし」で、宮司の当方も一生左団扇で暮らせる。ま、「一生」と言っても、あと半年一年だが。
 ちなみに、サマージャンボはバラ券を5枚だけ買って、3本が当たりだった。尋常ではない当選確率だ。しかも、よくあるパターンでは、段階を追って等級が上がって行く。次は2等か組違い賞だな。 
 来月あたりに、ドバイから便りが届いたら、それはそれで楽しい。