日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第366夜 麻雀卓

金曜の夜に、居間で寝込んだ時に観た夢です。
ワインを1杯なら大丈夫ですが、2杯飲むと眠くなってしまいます。
やはり今は安定「低調」状態になってます。

「おい。お前の番だよ」

その声に目を開く。
いつの間にか居眠りをしていたのだ。
我に返ってみると、麻雀卓の一辺に座っていた。
ここは・・・。

思い出した。
ここは20年以上前に出入りしていた麻雀店だ。
正確には「店」ではなく、マンションの部屋だ。
高額レートの麻雀を打つので、一般の店ではできないから、こういう所でやるわけだ。

回りを見渡すと、面子はさすがにオヤジ連中だった。
皆、かつて見知った顔ばかり。
対面のオヤジは某組の組長。
この人は確か四十幾つで死んだっけな。
この人の最後の麻雀の時にオレも一緒に打った。
朝方、「ちょっと寝る」と言って、長椅子の方に横になったら、鼾をかきだした。
組長はくも膜下出血を起こしており、そのまま朝には亡くなった。

俺の上家は、コージという名で、俺と同い年。仕事は金貸しだ。
金貸しと言っても、もちろん「裏金」だ。
元は右翼と暴力団との間を行ったり来たりしていたが、ヤクザ者に金を借りて、それをまた貸ししていた。相手も違法ゲーム店や裏カジノの経営者だから、やはり違法なやつら。
「1人がフケれば、お前が追われる。リスクが高いのだから気を付けろよ」
そう言っていたのだが・・・。
一時は「若い衆」を四五人も面倒を見るほど羽振りが良かったのだが、やはり金が詰まったらしい。
貸した相手が逃げたので、今度は自分が追われる方になった。
結局は、コイツはある日突然、姿を消した。
うまく逃げられたのではない。たぶん、この世から消えたのだ。

下家は廃棄物の業者だ。
山奥に最終処分場の権利を抱えている。
田舎の村に、処理場をただで建設してやる替りに、処分場の権利を数十メートル貰う。
広さではなく、深さだ。
首都圏から出た灰を捨てるわけだが、その村では20年かかる深さでも、3年で埋まってしまう。
20億円の中間処理場を作ってやっても、1年で元が取れる。あと2年分は利益になる。
土地の収用だけが問題になるわけだが、そこは暴力団が担当する。
もちろん、ドラマみたいに脅すわけではない。
本物のヤクザは「殺すぞ」などと叫んだりしない。
「どっちが得するか、良く考えてみよう」と選択肢を2つ出す。面倒事が長く続く選択肢と、お金が手に入るという選択肢だ。
ほとんどの人が後者を選ぶので、案外スムーズに進む。
トラブルに発展するのは、ヤクザもどきの素人が真似をしてやっている。
今は「〇組だ」と言ったところで、暴対法でアウト。たったそれだけで、実刑を食らう。

そういう手合いとつるで仕事をしているので、通称「ゴミ屋」の社長は「つきあい麻雀」を打ちに来る。
そういう絡みもあってか、「ゴミ屋」と言っても、年商は3百億を下ることは無い。
その社長はその会社を50歳を過ぎてから始め、それからたった十年でここまで来たのだ。
もの凄いやり手な上に、色々と外には言えないこともやって来たということだ。
中間処理場では、組の人間のために「ゴミ以外のもの」も焼いてやっているらしいとの噂がある。

「随分待たせるねえ。どうしたの?」
その声に促されて、俺は牌を河に置いた。
「コンドーちゃん。あんたがなかなか来ないから、面子が立たない。早くこっちに来てよ」
俺はここで「ふふ」と笑いをこぼした。
そう言えば、この頃は「コンドー」と名乗っていたのだっけな。
何せ俺は大学の非常勤講師で、それでは食えないから、こうやって麻雀を打っているのだ。
俺の取り得は記憶力で、大学では統計学を教えている。
「今、どういう牌が何枚残っているか」はスラスラ出て来る。
他の3人の手元を見れば、どの牌が入っているかも完璧に分かる。
問題は、牌山にどう残っているか、ということだけだ。

「変わった物があるよ。食ってみる?。ちょっと。あれ持って来て」
ゴミ屋の社長が奥に叫ぶ。
マスターが何かをお盆に載せて持って来た。
皿に盛られた何かだ。
皿に視線を向けると、盛られていたのは虫だった。
それも、蜂の子みたいな小さいヤツではなく、鉄砲虫の幼虫よりも大きなヤツだ。
しかも生きていた。

社長が「くく」と笑っている。俺をからかおうとしているのだ。
「俺が先にひとつ頂くよ」
社長はそう言って、虫を一匹つまんで口に入れた。
「さあ、どうぞ」
ここで俺は社長に礼を言った。
「ああ、どうも有り難うございます。俺はこういうのは平気なんですよ。タイとかフィリピンに長く滞在したことがあるので、何度も食べています。でも・・・」

危なかった。
「平気だ」と示すために、食ってしまう寸前だったが、俺はここがどこかを思い出したのだ。
ここは、生者と死者との間の世界だ。
ここで物を食うと、もはや「あの世」の住人になってしまう。

「これを食ったら俺は家に帰れない。皆、人が悪いな。俺のことを騙そうっての?」
ややキツめにそう言うと、三人がへらへら笑った。
「はは。悪い悪い。お前がいないと、どうしても面子が1人足りないんだよ」

おいおい。そんなんで俺を連れて行こうとしたわけなの?
ここで俺はもう1つ別のことを思い出した。
「そう言えば、頻繁に夜中の2時3時に玄関のドアを叩くヤツがいる。あれはあんたらの仕業なの?」

この俺の質問に、三人が揃って顔を上げた。

ここで覚醒。

返事は聞けませんでした。
死んだ後で、延々と麻雀を打たされるなら、それは本当に地獄です。