日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第938夜 未来世界

◎夢の話 第938夜 未来世界

 二十日の午前五時に観た夢です。

 

 我に返ると、どこか知らぬジャングルの入り口に立っていた。

 「ここはどこ?なんで俺はここに?」

 うっすらと記憶が蘇る。

 「確か、遺跡を見に来たんだったな」

 ここには赤いタイルで作られたピラミッドがあるそうだ。

 自分の身なりを確かめると、割と軽装だった。ウォーキングシューズに上下コットンの服。装備はカメラだけ。

 「では遺跡はこのすぐ近くなんだな」

 前に目を向けると、目の前に小道があったから、それに従って歩き出した。

 

 三十分も歩かぬうちに、それが見えて来た。

 うっそうと茂る密林の中に、赤茶けた岩山が聳え立っていたのだ。

 と言っても、頂までの高さは数十㍍程度だろう。そこは人工物だ。

 エジプトのピラミッドよりコイツはだいぶ小さいようだ。

 間近に近づくと、紛れもなく人工物で、正面に階段が付いていた。

 「この辺は中米のピラミッド風だな」

 そう言えば、娘と一緒にマチュピチュに行く夢があったのに、とうとうそれも果たせずに終わった。

 

 階段は三百段を超えている模様だ。

ゆっくりと上がって行くと、割と早いうちに階段が崩れ、先に進めなくなってしまった。

 崩れた箇所を検分すると、どうやら煉瓦を積み重ねて出来たもののようだ。

 割れ目に足を掛けて上って行けそうでもあるが、しかし、煉瓦なら脆くなっている可能性が大だった。

 しばし思案していると、階段の脇の方から声を掛けられた。

 「上には行かない方がいいよ」

 声のした方に顔を向けると、五十歳くらいの短髪の男が階段の脇に立って、こっちを見ていた。

 いつの間にそこに来ていたのだろう。

 男は俺の持つカメラに眼を留めた。

 「あんた。別のところから来たんだな。ここじゃあ、そんなものを持つ者はもういないから」

 「そうですよ。私はこれを見に来たのです。ここは一体、何なのですか?」

 「何だかピラミッドみたいだろ。でも違うんだよ。ここは廃棄物処理場だった。大規模なビルを作るのに沢山の資材を用意したのだが、ほれ、例のアレで計画がとん挫した。そこで仕方なくその資材をここに積み重ねたというわけだ。いざゴミ捨て場になってしまうと、周囲からゴミがどんどん集まる。だからこんな風になってしまったが、だが最初に捨てたヤツのセンスが良くて、ピラミッド型の土台にした。すると後から捨てる者も、ついそれに倣い同じように積んだ。それでこんな風な遺跡が出来たというわけだ」

 俺は黙って男の話を聞いていたが、すぐに疑問が湧き上がった。

 今の話は都会の話だ。でもここはジャングルの中で、建物など見当たらない。

 一体、どの建築現場から煉瓦を運んだというのだろう。

 

 「ここはもうここまでしか上れないんだよ。些細なことでがらがらと崩れるからね。でも、ここよりも面白い場所があるよ。これからそこを見に行くけれど、一緒に行くかい?」

 ここよりも面白い場所なら、もちろん、答えはイエスだ。

 「ええ。行きます。宜しくお願いします」

 そこで、男と一緒に階段を降り、再びジャングルの中に分け入った。

 途中で数人が合流し、六人の集団になった。

 皆、さっぱりとした服装をした男女で、三十台から四十台の者が多かった。

 俺は頭の中で、「この人たちはどこから湧いて来たんだろ」と考えた。

 原住民ではないだろうが、皆が軽装だった。「近所から来ました」みたいな。

 

 例の男が後ろを振り返って、「着いたよ」と言う。

 さしたる特徴の無い、平坦な土地だった。

 誰かが「ここに何があるのですか?」と男に訊く。

 すると男は「見れば分かるよ。凄いことになってるから」と答えた。

 男が腰を屈め、直径が五十㌢大の石を取り除けると、その下にはぽっかりと穴が開いていた。

 皆が集まる。

 交互に穴の中を覗くが、真っ暗で何ひとつ見えない。

 一人が「おーい」と叫ぶと、誰もが穴に向かって叫ぶようになった。

 「ヤッホー」「バカヤロー」

 声は穴の奥まで響いて行く。

 「こりゃかなり深い穴ですね。どれくらいの深さなのか見当もつかない」

 「だが、ひとが作ったものだ。この周囲が陥没せずにいるのは、この下がコンクリだからだよ」

 俺は頭の中で、「でもここに穴が開いてるよな」と思った。徐々に崩壊しつつあるんじゃねえの?

 「これは何なのかしらね」と女。

 

 俺は何となく見当が付いていた。 

 「これって地下鉄の跡じゃないかな。都心にある地下鉄の駅なんかはとんでもなく深いところにあった。これに一番似ているのは、そういう地下鉄のトンネルだと思うよ」

 皆が俺のことを見て、最初の男と同じようにカメラに眼を留めた。

 「ああ、貴方は別のところから来たんですね」

 皆が頷く。

 「でも、こんな風に深く掘るのは、都会の中心部だけだ。こんなジャングルの中では、樹々を切り開いて、地面に軌道を作ればよかったのにな」

 この俺の言葉に返事をする者はいなかった。

 

 帰路、最初の男が俺に言った。

 「ここには、まだまだ未知の遺跡があるんですよ。でも、何のためにあるのか分からないのです」

 周囲は見渡す限り密林だった。都市の遺跡があるわけだが、どうしてこんな風になったのだろう。

 暫く歩いていると、空の一角が丸く見えている箇所に差し掛かった。ジャングルの木の枝がたまたま同じように曲がっていたので、隙間が出来たのだ。

 すると、その隙間から、はるか遠くにある建物が見えた。

 「あれは・・・」

 俺はカメラを取り出し、望遠鏡代わりにズームアップしてみた。

 「あれはお城じゃないか」

 そこに見えていたのは天守閣の残骸だった。

 「あれは姫路城か大阪城あたりだろう。そうすると・・・」

 答えはひとつしかない。

 

 どうやら、俺は「チャールトン・ヘストン」だったようだ。

 そこで俺はお決まりの台詞を口にした。

 「なんてこった。ここは地球じゃないかあ!」

 今の俺はまさに「未来世界に落ちて来た宇宙船の船長」そのものだった。

 ここで覚醒。

 

 周りはぜんぶ猿で、ここは猿の惑星だった、みたいな話だ。

 地球温暖化が一気に進み、アジア全域が熱帯雨林気候、アフリカから西欧が砂漠いなっている設定だったようだ。人類の多くが南極に住んでいて、「俺」はそこからやって来たか、時間移動してそこに着いたかした模様。人類は一億人に届くかどうかと言う程度まで数を減らしている。

 

 ちなみに、映画の終わりにチャールトン・ヘストンが叫ぶのは定番で、『猿の惑星』なら「ここは地球じゃないか」、『ソイレント・グリーン』なら、「これは人間じゃないか」、『オメガマン』なら「この俺が怪物だったんだ」になっている。最後のは編集段階で削られたかもしれんが、原作ではそう。