日刊早坂ノボル新聞

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◎映画「ブラックフォン(黒電話)」を観て

映画「ブラックフォン(黒電話)」を観て

 病棟のベッドで過ごす時間がやたら長いので、時間を潰すのに苦労する。身動きが出来ぬので、本を読むことも出来ず、モニターかスマホを眺めるだけ。このため、映画ソフトを観る本数がかなり多い。

 病院のモニターに回線を繋ぐわけにもいかんので、結局、レンタル店で借りることになる。月に15本から20本は借りて観ている。

 土曜日に観たのは、ホラー映画の「ブラックフォン」。

 筋はありきたりで、「いかにも」の展開なのだが、割と面白かった。

 

 物語は70年代のデンバーが舞台。母親が早く死に、飲んだくれの父と暮らす兄妹がいる。

 小学校で兄はいじめっ子に苛められる役だ。妹はしっかり者でそんな兄のことを心配している。

 街では小学生が行方不明になる事件が五六件続いたが、警察は手をこまねいて何も出来ずにいる。

 兄のことを庇ってくれた同級生も何者かに攫われた。

 強い仲間が居なくなったので、兄は再びいじめられっ子に戻った。

 妹は霊感の働く方で、夢に観た犯人のイメージを被害者に伝えた。それを聞きつけた警察が家を訪れる。公表していない情報を妹が知っていたので、確かめに来たのだ。

 警察が帰ると、父親は「母親のようになるな」と言って、妹を折檻した。

 そんなある日、兄が誘拐され、地下室に閉じ込められる。

 これまでの行方不明は同一犯による犯行で、犯人は鬼の面を被ったサイコパスだった。

 地下室には、回線の切れた黒電話があったが、兄が一人でいる時にその電話が鳴る。

 兄がその電話に出ると、声の主はあれこれと逃げ方を教えてくれるが、なかなか上手くいかない。

 そしていよいよ殺されそうになる日が来て・・・。

 この先は「どうやって逃げ出すか」という展開になる。

 兄妹は母親の血を引いて、両方とも霊感が強かった。このため、霊と交流を持つことで、打開策を見出して行く。

 

 ま、心霊系の映画としてはフツーの筋立てなのだが、一つひとつの細部を丁寧に描くのと、演技に細かく気を遣っていることで、面白く仕上がった。犯人役がイーサン・ホークだが、この役者はマニアックな演技をすることで知られている。

 私が感心したのは、とりわけ最初の方の状況説明だ。

 父親は酒を飲んでは子どもに暴力を振るう粗暴な男なのだが、そうなった理由は、妻が自死したからだ。子どもたちの母親は霊感の強い人だったが、それが重荷となり自死を選んだ。

 この段階でひと言も出て来ないのだが、この父親が亡き妻や子供たちを心底愛しているのが、うまく伝わった。表向きは言葉にも演技にも出て来ないのだが、子どもたちを母親と同じ目に遭わせたくないから、辛く当たっていた。 

 これを上手く表現できているので、その時点で映画的に成功していると思う。

 この父親役の役者さんも、時々、凝った役で見掛けるから、製作スタッフが前からの仲間なのだろう。

 

 回線の繋がっていない「電話のベルが鳴る」という状況は当家でも同じだ。もちろん、映画のように「ジリリリリリ」というベルではなく、「プリン」「チリン」だけなのだが、それでも回線は通じていないから、理由が分からない。

 固定電話の方はベル音だけだが、携帯からは人の声がした。

 目の前で起きている事態が信じられずに、散々調べさせられたが、音声認識が機能して勝手に言葉を発するケースはあるが、意味の取れぬ文章であることがほとんどなそうだ。

 「憑いた」「憑いたぞ」などと、「人を呪う」類の言葉は吐かない。

 この映画と自分自身が経験したことにリアルな共通点があったので、余計に面白いと共感したのかもしれん。

 今現在は家庭用も携帯もおかしな音を立てなくなった。

 

 事件が完全解決したのでこの映画の続編はないと思うが、素材としては勿体ない。

 当たり前のことでも、一つひとつを丁寧にやれば、完成度が高くなるということを知らされた映画だった。

 いつもはビデオなどは斜め観なのだが、この日は最初から最後まできちんと観た。

 

追記)今年の前半では、現実に九死に一生を得たが、「死に間際」付近では常識では説明できぬ事態が相次いだ。
 「死ねば終わりになる」だと?いったいどんな阿呆が言っているのか。

 本物の「あの世」は、生者が考えているものより、はるかにリーズナブルで、かつとてつもなく怖ろしい漆黒の闇だ。

  ま、いずれ誰もが目の当たりにするわけなので、ここがこうだと言うまでもない。

 たかを括っている者ほど驚くだろうが、その時の顔を見てみたいもんだ。