日刊早坂ノボル新聞

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◎病棟日誌「悲喜交々」1/5 やりたいことをやっとけ

病棟日誌「悲喜交々」1/5 やりたいことをやっとけ

 看護師に「調子はどうですか?」と訊かれたので、「今は生涯最高」だと答えた。

 「今より良くなることはないからな」

 看護師も「ある意味その通りです」と納得。

 寒い時期には体調を崩す人が多く、隣の三十台女子患者もしんどそう。若いのに私よりベテランだが、あまり悪くならなければよいと願う。

 二十台で市販薬を飲んで一発腎不全になったそうだから、もう十年以上経過している。

 全身が次第に弱って行くから、「理由が分からないが調子が悪い」が始まると、もはや時間はあまり残っていない。

 いつも隣にいて、娘みたいな感覚になって来たから、出来ることがあれば全力で助けようと思う。

 たぶん、結婚はしないし、彼氏とデートすることもないだろうな。
 不憫で堪らない。

 

 「ネットにアバターを作って、薄幸の美少女に化けるってのはどうだ?十八歳くらいの」

 世間の男たちを煙に巻いて遊べばいいのに。

 運命に逆らって抵抗すればよい。かき回せ!

 「普通に暮らす、退屈な毎日」の有難さを、一般人たちに教えてやれ。

 実際にそう「吹いた」が、本人にはそんな気はないそうだ。

 でも、金を騙し取ったりしなければ、特に問題はないと思う。

 「ネット情報」と「K国人の証言」ほど嘘くさいものはない。作り話だな。後者はもはや民族病。

 隣の患者とはお母さん同伴で食事に連れて行く約束をしているが、コロナで無期限延期になったままだ。

 まだくたばるなよ。

 

 師長と中国の感染状況について話をした。

 あの増え方と致死率の高さは、「新たな変異株」か「初発種のぶり返し」のどちらか。最初に流行した「変異していないウイルス」なら重症化する。で、もしそれなら、紛れもなく「コロナの根源は中国発」という意味になる。

 前みたいに、中国から逃げて来る者をただぼおっと受け入れていたら、日本国内もまた最初からやり直し。

 一日の死者が千人に達した日があったが(今は四百人)、もし年間通じてその状況になると、三十万から四十万人が死ぬ。

 死亡数自体はさっくり言えば年間百万人だから、とんでもない数だ。スペイン風邪の最初の年がたしか四十万人くらいではなかったか。

 だが、国として出来ることは、ワクチンの投与と、効くかどうかわからん治療薬の認可まで。「あとは本人次第」ということで、この後は「自然淘汰のうち」という解釈に向かっていく。

 困ったことに、スペイン風邪は四年くらいで終息したが、この感染症は何年経っても収まらぬ可能性があることだ。

 

 「それなら、とりあえず、今やりたいことを優先し、思い残すことがないようにすべきだな」

 師長も頷いていた。

 病棟では、発熱患者用のスペースが間に合わなくなり、病棟の隅をビニールで囲ってそういう患者に充てている。ま、もちろん、そこで治療するのは、インフルもどきの患者までだ。

 我々患者は「感染即死」の筈だが、未病の人だって、それほど状況に変わりはない。発症発熱して一日で亡くなる人が結構いる。

 「老後など来ないかもしれない」ことを頭に入れて置く必要がありそうだ。 

 

 先日、病棟からお茶農家の主らしきオヤジさんが姿を消したが、やはり帰って来ない。右肩の黒玉を見ていただけに、後悔する面がある。

 白い煙玉は目視では見えないが、黒玉の方は見える。

 腫瘍を切り取るみたいにご神刀を振るえば、効果があったかもしれん。自分については時々やるし、今生きているのもそういう手立てを打っているからだと思うが、他の人に適用したことは無い。

 ま、こっちにも跳ね返る面が必ずあるので、極力「関わりたくない」とは思う。世捨て人ほど気楽なものはない。

 ちなみに、重篤な病人に黒玉が出始めたら、ヤマは十日くらいの内に来る。私は結構乗り越えられているので、「これが出れば終わり」でもない筈だと思う。

 だが、私は「常に例外」の立場だ。

 直接、「お迎え」に会ってから、もはや六七年間死なずにいる。

 この辺のノウハウを確立できれば、数か月から一年くらいの延命は可能になると思う。もちろん、それにも「あの世」の所在を受け入れることと、自身の死期を知る覚悟が必要だ。