日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎八十億ドル負ける

◎八十億ドル負ける

 目前の不安材料(黒いひと)がなくなると、現実問題がのしかかる。とりあえず、病院のベッドで六時間過ごすのに、何かしら時間を潰す手立てが必要だ。

 テレビ、ビデオやようつべも飽きたし、WBCも終わった。

 困ったな。

 何気なくスマホを見ると、内蔵のゲームがあった。

 麻雀ゲームか。もう二十五年くらいやってねえぞ。

 俺は弱視が強くなり、二万と三万の区別がつかないもの。

 

 だが、スマホゲームにはチョンボはないし、止まってくれる。

 牌の判断に困り、拡大して見ても文句を言われない。

 「じゃあ、千点五百万ドルなら付き合ってやる」

 すると、瞬く間に六十億ドルほど負けた。

 下家が下手過ぎて、「てんぱりゃタコ突っ張り」で打つか上がるかするせいで、そのあおりを食って「大体三着、時々ラス」の二人負けだ。

 とりわけ脈絡のない嵌張待ちを一発でつもる。

 町場にもそういう奴はいるが、場の状況を読んで山に寝ているからその受けにする。 

 五巡目で「ただの嵌張待ち」にはしない。

 「積もってナンボ」を実践しない限り、結局は敗けて帰るクチだぞ。

 この「下家が単なるヘタクソ」と分かった時には、マイナスが八十億ドルだ。

 他人の手を考えて回っているから後手にも回る。ヘタクソの頭の中は単なる自己都合だけ。俺も下手だが、コイツよりはまし。

 

 スイッチが入り、負債を吸収するのに、五時間以上かかった。

 麻雀が打てるのは「対面だけ」だと判明したので、それからは楽だった。

 「対面以外は外で打つところまでは行ってねえぞ」

 対面だけが、「やたら上手」な設定になっていたが、それもその筈で、どんな牌が来るかが分かっているヤツの打ち筋だった。

 大体、こういう奴は山を両手で触る。

 「おめー。その扱い方なら帰る時には半殺しになるよ」

 外で勝負するってのは、「生きて帰れるように、相応の身を処し方をする必要があるんだよ」と諭しながら打った。

 

 八十億ドルの負けを取り戻したところで止めたが、六時間くらい通しでスマホを見ていたから、ひとまず仮眠したが朝起きれない。結局、娘に揺すり起こされた。

 先ほど、娘を駅まで送ったが、途中でつい愚痴を零した。

 「父さんは、テレビゲームに嵌る子どもの気持ちが初めて分かった。止められなくなるんだな」

 パチンコとか、キャバクラの姉ちゃんに嵌る心境と同じだ。

 すると、いつも仏頂面をしたまま、ろくに返事もしないのに、娘がきちんと返事をした。

 「お前もゲームをしたりするのか?」

 「うん。時々」

 娘はもう子どもではないが、時々、スマホのゲームをするらしい。

 とりあえず、ここで親子の会話のネタを発見した。

 バクチに関わりないゲームで共通の話題を見付ければよいわけだ。これで接点が生まれるかもしれん。

 

 もうひとつ思い付いたことがある。

 息子はゲームプランナーの業界に進みたいらしく、今はひたすらゲームを作っている。

 その息子にゲームの提案をしてはどうか。

 素材は「黒いひと」ゲームだ。

 内容は、色んな死神が襲って来るが、その親玉が「黒いひと」。

 「黒いひと」の手から逃れつつ、黄泉の国からお宝を盗んで来るってのはどうだ?

 あるいは、黄泉の国に連れ去られた彼女を取り返しに行く。

 神話なら、「あの世で会った伴侶はもう変貌していてもはや現世には戻れぬ」ことを発見する流れになるわけだが。

 

 さて、まだ先月を越えていないという現実もあるので、スマホゲームはこれで終了だ。だが、対話のきっかけが見付かったので、少し今流行りのヤツを勉強しようと思う。

 この日は借金が「八十億ドル」(w)。負債もそこまで行くと、むしろ気持ちが良い。