日刊早坂ノボル新聞

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◎病棟日誌 悲喜交々 「冷やし味噌ラーメンの発祥はどこ?」

病棟日誌 悲喜交々 「冷やし味噌ラーメンの発祥はどこ?」

 夏と言えば冷やし麺だ。

 「冷やし中華」「盛岡冷麺」など色んな選択肢がある。

 そんな中であまり自由に食べられぬのが「冷やし味噌ラーメン」だ。

 今から二十五年前に所沢に住んでいたが、近所にラーメン屋があった。そこの主人が新潟出身らしく、店内の壁には新潟名物の食材や酒のお品書きが貼ってあった。

 その店にしかない総菜や料理もあったのだが、冷やし味噌ラーメンもそのひとつ。

 周りの雰囲気から見て、たぶんこれも「新潟名物」と思い込んでいた。いわゆるご当地麺だ。

 引っ越した後、またあの冷やし味噌ラーメンが食べたくなり、置いている店を探したが、見つからない。

 思い余って、所野沢のあの店を訪れようとしたが、既に何年も経っていたから、閉店し更地になっていた。

 「こりゃ鰻のせいろ蒸しと同じように、首都圏では難しいのか」

 柳川名物の鰻せいろ蒸しは、首都圏では数軒しか取り扱っている店が無い。そこに行こうにも、はるか遠隔地だ。柳川に行った方が早いかもしれん。

 

 仮に新潟名物だとしたら、まずは「新潟」を手掛かりに探して行く手だ。

 そこで思い出したのが看護師のエリカちゃんだ。

 エリカちゃんの田舎が新潟で、バイク乗りのエリカちゃんは「バイクで行き来している」と言っていたっけな。

 そこで、この日はそのエリカちゃんに訊いてみた。

 「冷やし味噌ラーメンは新潟のご当地麺なの?どこで食べられる?」

 すると、エリカちゃんは「知らない」と答えた。

 冷やし味噌ラーメン自体を食べたことが無いそうだ。

 さらに「新潟のラーメンにには四つの系統があって、※※は背脂、※※は・・・」と長い説明をしてくれた。

 食にこだわりがあるらしく、説明が詳細でここは憶えられない。

 だが、冷やし味噌ラーメンが「必ずしも新潟名物というわけではない」ことが分かった。

 

 ネットで引くと、今はチェーン店でも扱っているような状況らしいが、当方は大本の「ご当地の味」を食べたい。派生したり伝播したものは、やはり「本来の味」とは違う。

 必ず本家を探し当てて、かつそれを自分で作れるようになろうと思った。

 

 翌日には「冷やし」ではない普通の味噌ラーメンを家族に食べさせようと思い、まずは出汁を作り置くことにした。

 昆布、煮干しと干しシイタケで出汁を取り、これを冷蔵庫に入れて置く。

 作りながら、「この出汁は冷やしようでも使えるな」と思っていると、冷蔵庫の中に冷麺用の具材が全部揃っていることに気が付いた。

 付け合わせの西瓜まできちんと揃えられる。

 なら冷麺を作ろう。トダキュー冷麺なら常備してある。

 

 ここで「即席麵の法則」を思い出した。

 「ラーメンなど即席麵は、書かれてあるレシピを忠実に守る」

 これが基本で、アレンジはその後の話。

 ちなみに、このことを当方は「コーヘイ主義」と呼んでいる。

 高校時代に西根出身のタナカコーヘイ君が「レシピを守らねば絶対にダメだべ」と力説するので、その通りにしてみると、彼の説は真実だった。料理研究チームが日夜努力して作り上げたのが、包みに書かれたレシピだ。これよりその素材を美味く食べられる方法はない。

 当の本人のコーヘイ君は、まさか当方がその後何十年もコーヘイ主義を旨としているとは想像していないと思う。

 

 ということで、丁寧に採った出汁を使って、温かいスープを作りこれを冷やした。

 具材もきちきちと揃え、レシピ通りに盛り付けた。

 一点だけ違うのは、脂を控えているので、本来は牛肉を使うところを、豚のチャーシューに替えたところ。これは健康上の理由なので致し方ない。さらに下茹でして脂を落としてある。

 

 丁寧に揃えたので、味は申し分ない。

 店で出しても違いがほとんど分からないと思う。

 そして、丁寧に作れば作るほど、限界も見える。

 今やキムチやカクテキは本来のエビや小魚を出汁に挟み込んで作るのではなく、うま味調味料を使っている。

 健康な人はほとんど気付かぬと思うが、体が敏感になっている者には、これが舌に触る。この先には新しい味の世界は開けない。

 そもそも半島系総菜で唐辛子を多用したのは、「保存」と関係しており、塩漬けの野菜の風味を直すためだ。キムチは発酵食品ではなく塩漬けだから味が劣化する。これの改善ということだ。

 で、そのカプサイシンは、本来、食材が持っていた風味を壊す効果も与えるから、味に奥行きがない。

 うまみ調味料と唐辛子をまぶした料理には未来はないと思う。

 半島系料理が世界で認められぬのは、これの影響だ。

 出汁はきちんと自然のもので採り、かつ唐辛子を極力押さえた素材の味を生かした方向性を探るべきだと思う。

 

 例えが適切ではないかもしれんが、化粧をまぶした夜の部活のお姉ちゃんと同じで、「このままの姿で家で寝起きされても」困ってしまう。

 これを想像すると分かりよい。

 

 画像は朝から入魂で作った盛岡トダキュー冷麺。

 この会社は常に商品を開発してやがるなあ(誉め言葉だ)。

 ちなみに、茹でる前に「一本一本をばらす」のが「茹でむら」が出なくて良い。

 また、夏は西瓜、冬は梨が定番だ。これ以外は邪道で、かつこれが無いと冷麺が成り立たない。