日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第218夜 お迎え

今朝方、目覚める寸前に見ていた夢です。

気がつくと、階段をゆっくり上っていました。
この階段には見覚えがあります。
ここはN区にある麻雀店で、20代半ばの頃に出入りしていた場所です。

2階に上り、ドアを開けると、オヤジ3人が卓に座っていました。
「おう、来た来た。ずいぶん待たせるじゃねえかよ、Kちゃん」
あ、これはAさんです。
Aさんは元S会系のヤクザで、この店で知り合いになったのでした。
なぜか妙に馬が合ったので、Aさんに私は何くれとなく可愛がってもらいました。
その筋の人だと知らずに新年会に呼ばれていったら、総勢100人超の風体の悪そうな男たちの集まりだったことがあります。
当時は大学で非常勤の講座を持っていた時なので、居心地悪いこと悪いこと。
(さすがに、反社会勢力との交流がわかれば、大学は解雇です。)

また、Aさんに「一杯飲みに連れてってやる」と言われ、言われるまま従ったら、ハイヤーで吉原直行だったということも何度かありました。
確かに待合室で酒は出ます。
「相手の顔を潰す」ってことを絶対にしてはいけない人種なので、こういう時は黙ってご馳走になります。そうしないと、後で重大なトラブルに発展することもありです。

(でも、Aさんはもう十数年前にガンで死んだんだよな。)

Aさんの隣には、Hさん。
こっちもバリバリの不良で、Y組系の組長さんでした。
N区のここは、S会、Y組、テキ屋のK東と3系列がひしめく「番外地」でした。
しかし、元々「入れこ」になっているのが前提だったので、系列違いで麻雀を打ったりするのも「別にフツー」の状態でした。
これが隣駅だとそうはいかず、組の抗争で街中で銃撃戦が起きたりしていました。
「Kちゃん。遅いよ」
Hさんも、20年近く前、40歳そこそこの齢にして、脳出血で死んだはずです。

奥にはここの店長のヤマさんがいます。
この人も確か若いうちに死んだんだっけな。

何だか、嫌な感じ。
出てくる人皆が、既に亡くなっている人で、口を揃えて「待っていた」と言います。
まるで、皆で私のお迎えに来たみたいです。

(とりあえず、椅子に座らなくちゃならんよな。)
数歩前に進むと、店の電話がジリジリと鳴りました。
ヤマさんが出て、何事かボソボソと話した後、私に手招きをしました。
「Kちゃん。Kちゃんに電話だよ」

(え?いったい誰が、なんで、オレがここにいることがわかるわけ?)

電話に出てみると、相手は箱根の美術館の事務員でした。
「昼にこちらにいらっしゃいましたよね。駐車場のゲートが壊れており、料金収納機が動きませんでした。あなたの車は料金未納のままゲートを通過されたようですので、お電話した次第です」
「はい?」
そういやあ、昨日の夜は箱根の温泉に泊まり、どこか美術館のような施設を見てからこっちに帰って来たんだよな。
あそこのゲートが上がらなかったので、突破する勢いで走り出て来たんだっけ。
「料金を払って頂きたいのですが」
「幾らですか?」
「1200円です」

ここで、頭のどこかで「助かったあ」という声がします。
これで、この店を出る理由が出来ました。
受話器を置いて、皆に告げます。
「なんか、金を払いに行かねばならないようなので、すぐに行ってきます」
「ちぇ」と舌打ちが聞こえます。
「なんだよ、Kちゃん。せっかく来たのに、ビール1杯も飲まずに行っちゃうの?」
ここで、Aさんが断を下します。
「ま、仕方ねえだろ。決まりは守らなくちゃしょうがねえよな」
私はひとつ頭を下げ、後ろを向いてドアのほうに向かいます。

ドアノブに手を掛けると、後ろから声を掛けられました。
「待ってるからな」
「早く来いよ」
振り向いて、もう一度頭を下げ、店の外に出ました。

「確か、飲んだり食ったりすればアウトだったよな。その一瞬から、あの世の側の存在になってしまう。でも・・・」
ふう、とため息をつきます。
「今はともかく、オレがあの人たちと麻雀を打つようになるのも、そう遠くない将来のことだ」

ここで覚醒。

冥界に赴いた時、飲食物を取ってしまうと、もはやその世界の住人になる。
世界に共通するルールです。
いずれお仲間になる日も来るわけですが、今日明日であってほしくはありません。