◎強い敵がいてこそ光れる
二十六日の井上VSタパレス戦を観たが、明らかにタパレスも強い選手だった。
時々、的確なパンチを当てられており、ドキッとする場面が幾度もあった。
井上本人は平気な顔をしていたし、一切口にも出さんだろうが、かなりキツい試合だった。
ドネアも強く、井上がダウンさせられたほどだったが、今回のタパレスももの凄く強い。
試合的には、10ラウンドで井上がKOで勝ちこそすれ、紙一重だった。だが、もちろん、その紙一重は当人にとっては「果てしなく遠い」。
タパレスも「(井上は)早くてついていけなかった」と言っていた。
かつて長谷川穂積も、戦う相手選手が強い相手ばかりだった。そこを勝ち上がるから、ボクシング選手は「英雄」と言われる。
フィリピンのパッキャオとかは、四階級制覇だけでなく「常に前進姿勢」であることと、戦う相手が強かったことで、紛れもなく「英雄」の一人だ。
井上はその「英雄」の域に達していると思うが、それも今回のタパレスみたいな好敵手がいてくれたからだと思う。
タパレス選手は、フィリピンの貧困家庭で育った苦労人だ。
辛酸を舐めて来ただけに、人格が出来ている。物腰や話し方にも他者への敬意があり、好感が持てる。
試合に負けた側でも、「コイツは強い」と唸らせる奴だった。
まだ井上はあと二年はこの階級に留まると言うが、タパレスとの再戦はアリだと思う。
ほとんど負けたことの無い者が今回負けたが、次に再起して来たら、今度はさらに一枚上になって来ると思う。
ドネアとは二度戦ったから、タパレスももう一度あっても良いと思う。