日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎病棟日誌 R060801 初老うつ

病棟日誌 R060801 初老うつ
 朝、病棟の前に行くと、ウエキさんが出勤して来るところだった。私服でマスクなし。
 うーん。誰だか分からん。
 問診が当のウエキさんだったので、その話をした。
 「駅ですれ違っても誰か分からずに通り過ぎると思いますね」
 白い看護着を着ていると、少し膨れて見えるから、普段の姿だと細く見えてしまう。元々、この人は50台にしては締まった体型で若く見えるが、背も高いから、私服なら差が一層際立つ。
 「同じ年齢層の女性の中に入ると、全然若いですよ」
 胡麻を擦るポーズをしつつ、おべんちゃらを言った。
 ここは「おべんちゃら」だと分かるようにして置かぬと、変な雰囲気になることがある。

 「最近は初老うつに陥っている模様です。とにかく考えが暗くなる。体調が落ちている時はなおさらですね」
 「自覚出来るうちは病的な段階ではないですよ。自省できてます」
 「SNSやブログなんかで、日々の雑感を書いているので、それを自分で読み直すと、自分がどういう状態か分かりますね。その目的のために『本人限定』や『友だち』で日記を残します」
 「日記はなかなか続けられないんです」
 「紙だと思い付いた時に書けないので、SNSの自分限定記事が便利ですよ。腹の内をそのまま記すから、うっかり公開すると面倒なことになりますが」
 「岸田タヒね」は大っぴらで書いているわけだが。
 「じゃあ、私もやってみようかな」
 たぶん、もう一二年でこの人にも必要になると思う。
 ま、こういうのは女性はオヤジよりも酷くならぬことが多い。
 当方らの世代では、ちょうど引退時期に当たる者が半分くらいいると思うが、精神コントロールに苦労すると思う。
 運動や道楽で気を紛らわす手もあるが、数年で行き詰る。
 庭仕事などで生き物を扱うと、割と平常心を保てる。

 コロナに二度目、三度目と感染する人がいるが、その都度、症状と後遺症が三段落ち方式で重くなるそうだ。
 特に倦怠感の重さが増すらしい。
 当方は時々、朝どうにも起きられない時があるのと、味覚異常が改善されない。コーヒーを淹れている途中が醤油の匂いで、飲んでみると雑巾水の味がする。これがさらに重くなったら、さぞやっかいだ。
 若年層で、最初は殆ど無症状だったのに、二度目に本格的に「こんにちは」と来て、えらい目に遭っている患者が病院に来るとのこと。やはりインフルとは全然違う。

 帰路は八幡さまでセルフチェックをした。
 既にかたちを追わなくとも状況は分かるようになったから簡単だ。
 当方の右側は、当方を通り越して、背景の樹木が見えている。
 やはり「半分はあの世の者」だと痛感した。
 七年くらい前に「お迎え」に会ったが、本来はあの時に死んでいる筈だったのだろうな。
 心臓の治療の直後で、心房細動が頻繁に起き、その都度看護師たちが走って来るような状態だった。
 これまで調べてきたところでは、お迎えに会った後に、一年以上生きた者は当方以外にいない。夏目漱石は三か月で、概ねそれくらいから半年のことが大半だ。遠縁の金太郎さんが一番長くて、一年後だった。
 現状がこれで、「もうすぐ死ぬ人」の前兆だらけなので、死霊が寄って来るというわけだ。その意味では納得だ。
 自分自身の生き方死に方を考える先例は無く、他の者の参考になるべき立場だというのは、何とも微妙な気分だ。

 といあえず「黒いひと」は「死へと誘う者」であることは疑いない。これを見たら、即座に自分なりの信仰に従って、お祓いをする必要がある。他力ではほとんどダメで、自分でやる。