◎O君とエリカちゃんの共通点
O君、エリカちゃんは両方とも、私がいつも通っている病棟の看護師だ。
まずO君については、これまで幾度も記して来た。
・回り道をして看護師になったこと。
・同期よりも年かさのせいか、いつも少し退いた立ち位置にいる。
・いつも上司に叱られている。それも今時珍しく「怒鳴られている」状況だ。
・そこで臆する気持ちが強化されたのか、いつも俯いている。
学校でも職場でも、必ず一人はいる「どんくさいヤツ」で、動きがスローモーだ。
私自身が田舎者で、都会ではいつも背中を押されるような心持で暮らして来たから(ホントか)、O君の姿を見ると身につまされる。私自身と言うより、息子が「背中を指で押されるような境遇」になって欲しくないという気持ちの方だと思う。
ま、他人事だから静観するわけだが、ある時、O君が何故そういう境遇に陥ったのかが一発で理解出来た。
これまで隠して来たが、その時、私はO君の左肩に老婆が顔を乗せているのを目視したのだ。
思わず後退りする程の凶悪な顔だったので、見ていられなくなった。
まず、お守りを渡した。
次は、破魔用の鈴のストラップを作ってやった。
この鈴には割と丈夫な紐を使っていたのに、紐がよく切れた。
携帯用、カバン用、玄関用と三つくれてやったのだが、全部切れたそうだ。
どんな者でもこれが「良くない報せ」だということは分かると思う。
こういう場合、いきなり「あの世」や「悪縁(霊)」の話をしても、殆どの人が受け入れられない。想定外のことだから当たり前だ。
よって、その類の話は一切せず、「どうすれば運気が良くなるか」だけを端的に伝えた。
・日光を浴びる時間をなるへく持つこと。
・部屋の東向きの柱に天照大皇神と自分の家が信奉する神のお札を入れること。
気を付けるべきことは、
・信号待ちや駅のプラットホームで最前列に立たないこと、
などだ。
O君に見どころがあったのは、きちんと幾つかについて実行したことだ。
また、こちら側の心がけとしては、
・何かしら良いところを見付けて褒めること。
・家族のことや田舎のことなど、O君について関心を持ち、話し掛けること、などがある。
「挨拶では三つの異なる話題を提示する」というのは、ごく一般的な人あしらいのノウハウだ。
以上のことで最も効果があったのは、お札やお守り以上に「励ます」ということだった。
・「必ず良くなるから、騙されたと思って日光を浴びろ」
を繰返し、かつさりげなく言う。
ここからは、これまで頻繁に書いたことになる。
・「彼女を作って、週に二回はセックスをすると運気が良くなる」
O君は上段はともかく、最期の項目をきちんと実行し、風俗に行った。(私は「彼女」と言ったのだが、すぐには作れないから致し方ない。)
三四か月でO君の表情が明るくなり、今は快活に働いている。
朝一番で「昨日行って来ました」と報告に来たりする。頭イテ。
このところ私の体調が悪かったのだが、その様子を見たO君に逆に励まされる始末だ。
「もう問題はない」と確信したので、数日前、初めてO君に「こうやって色々と助言して来たのは、O君がお婆さんを背負っていたからだ」と伝えた。
もちろん、この後も交差点やホームでは気を付ける必要がある。自分に非が無くとも、災難が寄って来ることもある。そして、それを導く者がいたりする。
ここまでが前段だ。
病棟の看護師の中で、お守りやお札を上げたのは他に一人いて、それがエリカちゃんだった。
エリカちゃんの場合も、背後に老婆が寄り憑いているのを直接見た。
そこで確かめると、エリカちゃんは、やはり時々、体調が悪くなったり、体が重くなったりすると言う。
そこで天照大皇神のお札を家に入れることと、家を出入りする際に気を付けるべきことを数点報せた。
エリカちゃんは今現在アラ三十だが、女性の厄年の三十二の終り頃に病気をするか、トラブルに巻き込まれると思う。
私は霊能者でも何でもない普通人だが、あんな風に直接、(老婆の)顔を見てしまえば、何を考えているかは想像がつく。
子どもを作ったりする頃に不幸を被せて来ると思う。
で、ここからが本題。
O君もエリカちゃんも、背後に寄り憑いていたのは老婆だった。
髪がばさばさで、顔が皺だらけで茶色い色をしたバーサンで、両方ともよく似ている。
「人が違うのに何で似たような幽霊なのだろう?」と疑問に思うわけだが、答えは簡単だった。
O君、エリカちゃんはいずれも看護師で、日頃、高齢の男女の世話をすることが多い。
死に間際に顔を見ていれば、老人たちが特に個人的感情を持たずとも、「たまたま傍にいた看護師にまとわりつく」という事態が起きても不思議ではないと思う。
通常、病院は幽霊の少ないところだが、幽霊は場所でなく人に憑くことの方が多い。
エリカちゃんは新居を買い、ダンナと新しい暮らしを始めた。
そろそろ「天照大皇神をお迎えしとけ」と伝えておかねばならない。