日刊早坂ノボル新聞

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◎北奥三国物語『獄門峠』解説 「赤虎という男」

◎北奥三国物語『獄門峠』解説 「赤虎という男」

 軸足をブログやSMSからホームページに移すことにし、現在は『獄門峠』の第三章に至っている。眼疾を含め、体調と相談しながら進めるため、ペースはゆっくりだが、秋までにひとまとまりに持って行ければ良いと思う。

 今年は再び具合の悪い日々が続いているが、ある時、赤虎のことを思い出した。

 「そう言えばおざなりにしたままだ」

 赤虎関連の作品でも、未公表だったり書きかけだったりする者が割と沢山ある。

 どこまでできるかは分からぬが、可能な限りかたちにしようと思う。

 ま、体力的に電子書籍を含め、書籍化するのは困難だと思う。今はスタッフもいない。

 

 だが、日々、心が晴れて行く。

 さすが赤虎さまだ。

 赤虎はもはや人生のパートナーと言っても良いと思う。

 

 初めて赤虎に会ったのは『九戸戦始末記ー』の中だった。

 冒頭で厨川五右衛門が三戸に旅立つが、道中で盗賊の熊三と戦ってこれを倒した。

 熊三は北奥を荒らす盗賊団の毘沙門党の一員だった。首領は兄の赤平虎一だ。

 五右衛門が三戸の旅籠に逗留していると、赤平虎一が弟の仇を取るために現れ、旅籠を襲う。

 この時、赤虎は五十台で、禿げ頭。金棒を携えている。

 五右衛門は激戦の上、この盗賊の赤虎を倒した。

 連載を始めて、わずかひと月のうちに、赤虎は命を落としたのだが、しかし、何か閃くものがあった。

 私はまず外見を決め、キャラを確定させてから物語を書くので、赤虎についてプロフィールを塾考した、

 ・三人兄弟の長男で、弟は窮鬼郎と熊三。幼い頃に親を亡くし、生きて行くために盗賊になった。

 ・外見は三船敏郎さんをひと回り大きくしたようなイメージ。

 。「義賊」とはまるで違うが、侍や悪徳商人を襲い、時々、貧しい者に分かち与える。ポイントは正義とは無縁の存在であることだが、情に篤い面がある。何故なら自分も艱難辛苦に耐えたから。

 このように詰めて行くと、人格がすっかり確立されて、勝手に動き出すようになった。

 赤虎には赤虎なりの人生の軌跡がある。何故赤虎は赤虎になったのか。

 そう考えると、イメージが幾らでも沸いて来るので、『九戸戦始末記ー』とは別に、赤虎の物語を書き始めた。いずれも短編で、思い付いた時に並行して書いた。

 

『峡谷の怪物』:赤虎の最愛の人である七海が死に、遺児を預かったのに、その子をバケモノに攫われてしまう。赤虎はその子を取り返しに死地に赴く。

 物語中の怪物は『遊星からの物体X』に出て来る宇宙人の同類で、人の生き血を吸ってはその人に化ける。形式的には闘争劇だが、私的には「恋の話」だと思っている。

 七海とその子は、盗賊赤虎の生き方を変えた。

 

『無情の雨』:ひょんなことから、赤虎は奥州の最果てにある怖谷(おそれだに)まで「地獄の窯の蓋を閉じる」ために赴くことになった。赤虎は遠征隊を編成し、怖谷に向かうが、谷の手前で「猿(ましら)の三蔵」を倒す。三蔵は赤虎に恨みを持ち、待ち抱えていた。同行者には巫女の柊女がいる。題名はご存じハインラインの『無情の月』に敬意を示すものだ。

 ちなみに、赤虎は後年、金棒を武器にするようになるのだが、この金棒は怖谷で、地獄の鬼を倒して手に入れたものだった。

 この二作を書いたら、止まらなくなった。

 

『島の女』:赤虎がアラ四十歳頃の話。捕縛された赤虎が奴隷船の漕ぎ手になるが、船が難破して、ある島に流れ着く。その島は鬼女たちが棲む島で、その鬼女たちは五百年生きるバケモノだった。冒頭のイメージは『ベン・ハー』のガレー船に敬意を表したもの。鬼女の棲む島の話は、中世以前から存在するが、一説によれば済州島。赤虎は島の女の利江に会い、そこで夫婦になる。利江に島から逃がしてもらう。

 この島から逃れ出て、本州に着いた後、寺泊で『峡谷の怪物』の七海に会う。

 

『驟雪』:赤虎の最期はあっさりとしたものだったが、それには理由があった。

 五右衛門は、赤虎が水からの手で殺めたお藤という娘の魂を受け継ぐ者だった。

 お藤は姉のお玉と共に、地獄の窯の蓋を閉じるために生贄にした娘だった(『無情の雨』)。

 

<番外編>

『怖谷奇譚』:妖怪博士の井ノ川円了と、森下林太郎が、男を探すために怖谷に向かう。谷の入り口では老女(柊女)に出会い、中に導かれるが、そこは地獄と繋がっていた。

 円了と林太郎は窮地に陥るが、男(赤虎)が現れて、外に出してくれる。

 赤虎はこの世で迷っていた柊女の幽霊をあの世に導くために三途の川を渡った。

 柊女は『九戸戦始末記ー』で重要な位置を占める三戸の巫女である。

 

不来方情夜』:(早坂アンナ筆。アンナは妻との共作)

 『峡谷の怪物』の続編で、あの怪物が再び来襲する。赤虎は既に死んでおり、義妹の紅蜘蛛が不来方城で怪物と対峙する。この戦いを通して、紅蜘蛛は後に生涯の伴侶となる日戸佐助に出会う。

 

 「奇譚」シリーズは、シャーロックホームズとワトソンみたいなイメージで、そっちに引き寄せたもの。井上円了森鴎外の二人が、妖怪たちと戦えばさぞ楽しかろうと思って設定した。各々三部作にして原稿自体は書いてあったが、公表媒体がなくそのままに。

 『情夜』シリーズは、赤虎の妹である紅蜘蛛のためのもの。悲しい運命を背負った盗賊団の女首領にも安住の地が必要だと考え、シリーズ化したが、これも部分的にしか公表していない。

 

 いずれも既に十年は前に構成していたものだが、体調不良が著しく、なかなか先に進めなかった。だが、書籍化したり、ビジネス的な意味での編成を考慮しなくともよくなった。率直に言えば、死期が迫って来たので、かたち(業績)が不要になった。

 今では眼疾もあり、満足の行く仕事は出来ないが、赤虎さまはまだ解放してはくれぬようだ。

 今現在、公表を始めた『獄門峠』は、「大湯四郎左衛門の猿退治」をモチーフにしている。霊によって、ひょんなことから四郎左衛門に加勢することになった赤虎は、かつての妻である利江(『島の女』)虎は再会する。利江はある目的をもって、北奥までやって来たのだった。

 

 総ての物語は繋がっており、赤虎ワールドを形成している。

 赤虎三兄弟は、実は父や叔父たちを出発点として創り出されたものだが、書き手の私がそれに気づいたのは、かなり後になってからだった。

 体調が悪い時には、心が折れ、投げやりになるのだが、赤虎はそういう私を励まし、𠮟りつけてくれる存在になっている。さすが父の分身だ。

 まともなことは何ひとつ出来ない身上になってしまったが、数人でも勇気づけられればよいと願う。

 『獄門峠』  ※クリックすると移行します。

注記)眼疾があり、文字がよく見えません。誤変換が多々あると思います。