日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎霧にむせぶ午後(620)

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令和三年十一月二十二日撮影

霧にむせぶ午後(620)

 月曜の昼頃、家人に「湧き水を汲みに行く」と言い残し、家を出ようとした。すると家人が「私も行く」とついて来た。

 そう言えば、今日は家人は仕事休みで、明日も休日だ。

 湧き水を汲んだ後、N湖でお弁当を食べた。

 しかし、生憎この日は昼から小雨が降っていたのだが、お弁当中に急に濃霧が出て来た。

 既に晩秋だ。すぐに周囲が見えなくなった。

 道を踏み外してはたまらんから、早々に引き返すことにした。

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 帰路には、いつもの神社に参拝した。

 これで三日連続の参拝だ。

 家人がトイレに行っている間に、ぼんやり考え事をした。

 「もしかして俺は、コインのコソ泥を呪詛にかけてはいないだろうか。呪詛は自分い跳ね返るから不味いよな」

 でも、他人が努力して選り出した成果を横取りする者を許したら駄目だ。

 三代後には、子孫が耐えるようにすべきだ。

 「だが、そいつが成就すると、俺自身にも跳ね返る」

 少し逡巡する。

 

 すると、背後から声が聞こえた。

 「※※ちゃん。そんなのは簡単な話だろ」

 私を「※※ちゃん」と呼ぶのは、親族か小学生時代の同級生くらいのものだ。

 「それともう一人」

 アモンだな。てっきりコイツは半島に行き、ある者をスパイ容疑にかける手配をしているのかと思った。

 「※※ちゃん。品物をすり替えるのは窃盗だろ。警察に届ければいいんだよ」

 おお、なるほど。

 なぜこんな簡単なことに気付かなかったのか。

 ホルダーごと取り換えているのだから、紛れもなく確信犯だ。しかも、かなり杜撰な手口だから、間違いなくビニール手袋をして行っていない。

 「状況証拠だけでなく、れっきとした証拠が残っているな」

 さすがアモンだ。理詰めで攻める。

 「では、ひとまず弁護士と相談し、来月中に被害届を出す」

 「返せ」「そんなのは知らぬ」の問答が目に見えるから、それをすっ飛ばして、最初から窃盗事件で届ければよい。

 何十年も「先輩方に恥をかかせぬように被害を黙っていた」が、今はもう不要だ。

 ひとまず入札誌の編集にも「被害届を出す」と伝えて置こう。いきなり警察が行けば、少しく驚くだろうから、心の準備をしといて貰おう。

 今はスーパーでボールペンを万引きすると、すぐに警察を呼ばれる。窃盗はれっきとした犯罪だ。

 

 アモンはもう一つのことを教えてくれた。

 「死ねば仲間となり、生者と死者を繋ぐ者になるのだから、呪詛の『返し』などは考える必要が無いだろ」

 それなら配慮すべきことが減る。

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 出掛けに、何となく視線を感じたので、その方向を撮影した。

 すると、垣根の外に「女」がいて、神殿に向かって手を合わせていた。

 「まだ境内に入って来られないのか」

 強い思いを抱えているので、霊気の流れに入れぬのだ。

 哀れなので、いずれ声を掛けて、中に引き入れてやることにした。

 

 数年前、あの世に近づくには「十段階くらいのステップがある」と思っていたが、十番目はとっくの昔に通り過ぎた。

 ちなみに、秩父の「男」はコソ泥のところにもう着いていると思う。私の膵臓が何ともなくなったのは、そういうことだ。

 次第に自分が「説明のつかぬ怖ろしき者」に変わって行くのを感じる。

 ま、そもそもがアモンの仲間だ。