◎悪夢の話 第1164夜 「台風の夜」
◎悪夢の話 第1164夜 「台風の夜」
三月四日の午前二時に観た夢。
夢の中の「俺」は三十台の研究者兼経営者で、過去の現実に近い存在だ。
新しい学会を作ることになり、師匠筋のメンバーに誘われて、俺も参加することになった。
明日は最初の大会があるのだが、午前中の早い時間帯に、若手研究者が報告会をする予定になっている。
全国から当日移動で来る人もいて、午前中は集まりが良くないから、口明けから二時間くらいの間を若手が埋める。
会場の集会施設にはホストコンピューターがあったから、データをそこに送り、紙資料などもそこに揃えていた。
ところが前日の午後にこの地を台風が直撃した。
夜半には、施設の屋根が壊れ、天井からざあざあと雨漏りがして来た。
俺が見に行くと、ホストにはシートが被されていたが、とても使える状態にない。
「これじゃあ、明日は中止だな」
紙資料もとうっぇん濡れており、使える状態にない。
データなし、資料無しでは話にならない。
呆然と眺めているところに、師匠がやって来た。
「こりゃまた酷いことになったな」と師匠が言う。
俺は頭の中で、「これじゃあ、明日は中止だわ」と考えた。
しかし、師匠が続けたのは真逆のことだった。
「明日はここに来られない人が多くなりそう。四百人くらいを見込んでいたが、半分くらいになりそうだ。リポーターも報告を取りやめたいと申し出る人が半分くらいいるようだ。大会自体を注視には出来んから、明日は午前中の3時間を気味が繋いでくれないか」
えええ。俺自身も壊滅状態なんですが・・・。
俺が得意なのは応用の話で、「理論モデルを実際に適用するには・・・」みたいな話だ。これには実証データを駆使するから、データにトラブルが生じると、内容が成り立たなくなる。
だが、師匠には散々世話になっている。
何とかして繋がなければならんよな。
「朝までの猶予は六時間。それで出来ることと言えば」と考え始めたが、頭の中がぼんやりして上手くものを考えられない。
そもそも明日本来の報告内容を思い出せない。
ここで自分の状態に気付く。
「おいおい。俺の思考能力はどうなったのか。これじゃあ、既に引退したモーロクジジイと変わらんぞ」
あれあれ。俺って、その「既に余生に達したモーロクジジイ」なんじゃあないのか?
自我の拠り所を失い、グラグラと動揺する。
俺は二重三重に追い詰められる。
ここで覚醒。
物理的な困難があるのに、状況が許さない。責務だけが目の前に見える。これも悪夢にありがちなパターンだ。
もはや総ての活動から引退して、暫く経つのに、まだこういう夢を観させられるのは、何か外的要因が関わっていると思う。
おそらく今後は観る夢観る夢が大なり小なりの悪夢になって行く。