日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎他人目(ひとめ)が悪い

◎他人目(ひとめ)が悪い
 郷里で聞いた話です。
 近所の夫婦は、両方とも元教師。
 ダンナさんが70台半ば、奥さんが70くらい。
 今年の正月に、ダンナさんが餅を喉に詰まらせた。...

 ニュースでは「喉に詰まらせた」としか出ませんが、実際は「喉につかえた」と「気道狭窄を起こした」の2段階で、息が出来なくなります。
 この場合、喉が完全に餅で塞がるわけではなく、喘息の時のように、ぜいぜいと細い気道で吸ったり吐いたりする状態になります。
 
 すぐに救急車を呼ぶ必要がありますが、ここの奥さんはそうせずにタクシーを呼んだ。
 そこから、かかりつけの病院に行ったのですが、その病院では処置できず、初めてそこで救急車に乗り、総合病院に向かったそう。
 ところが、その間、1時間くらい経っているので、いよいよ息が詰まり、ダンナさんは救急車の中で亡くなった。

 この話を聞いて、母に訊きました。
 「救急車を呼べばいいのに、何故タクシーを呼んだの?」
 その答は「他人目が悪いから」なそう。
 私の郷里に限らず、「田舎」では他人の不幸を大喜びで噂するところがあり、何かが起きると尾ひれをつけて吹聴されます。
 それを嫌って、救急車を呼んだりするなど、「目立つこ」とを嫌う傾向があります。

 本当にあきれる。
 そこのダンナさんは、1時間くらいもったところを見ると、早く処置していれば、たぶん問題なく助かった。
 その人を殺したのは餅ではなく、田舎者根性だろうと思います。

 母も自分が入院したことが知れると、他人が嬉しそうに噂話をするだろうから、「一切、他所の人には言わないように」と言っていました。
 「他人目を気にするのは馬鹿らしい」と言う母ですらそうです。
 私は「別にどういう状況でも堂々としていれば、マイナスにはならない」と言うのですが、聞いては貰えません。
 他人目を気にし、何か言われることを嫌うから、他人が喜ぶのであって、本人がまったく 動じないと、噂話のネタにはなりえません。

 私の場合、誰に向かっても、「余命宣告を受けたこと」「障害者であること」を隠さないのですが、ごく平然と言うので、誰も信じません。
 ま、その後ろに、「先が短くなると、キレやすくなる。今はいざ怒ったら何をするか分からないんですよね」と付け加えてもいます(笑)。たぶん、そっちの影響か。

 自分も田舎者ですが、「田舎者根性」ほどくだらないものはありません。さすがにもはやそういうのは無いですね。 と言うか、目の前に棺桶が見えているせいで、他人のことにはまったく興味がありません。